ガマ | |||||||
暮らしとの関わり 荒らし田が多くなった近頃(2005)、ガマは石黒でもあちこちに見かけるが、1940年代には希にしか出会わない植物であった。ガマの生えるような湿地はすべて水田にしたからであろう。 そのため、子どもたちにとってガマの穂は珍しく魅力的な植物であり、たまに見かけると手折って持ち帰った。 子どもの頃の筆者には、昔話の「いなばの白ウサギ」に出てくる大黒様が鮫に皮を剥がれたウサギに身を包むように勧めたガマの穂が茶色のアイスキャンデーのような棒状なものであることがどうしても納得できなかった。上右写真のようなガマの種子についた白い毛を目にしたことがなかったからである。 ところで、「HP石川の植物」(※)には、大黒様が勧めたのは蒲黄(ほおう)、つまりガマの黄色い花粉(右下写真)であったと記されている。古事記のこの部分を口語訳すると「今すぐにこの河口に行って、真水でお前の体を洗って、ただちにその河口の蒲(ガマ)の花粉を取ってまき散らし、その上に寝転がれば、お前の体はもとの膚のようにきっと直るだろう」となるのだそうだ。 この花粉は漢方では止血剤、鎮痛剤の効能があるという。 ※http://w2222.nsk.ne.jp/~mizuaoi/index.htm 石黒でも、ガマは1950年代にも奥山に入れば結構自生していたらしく、このガマの葉を使って草履やハバキを作る人も多かった。 ガマは、8月の下旬から9月初旬に刈りとり、葉の頭をそろえて陰干しにして、使うときにはお湯でシトを打ってしなやかにしたという。 ガマの種子の旅立ち→写真 ガマとコガマは、外観からは、とくに小形のガマとコガマは難しい。区別する場合には花粉を調べ、4個ずつ付いていたらガマ、1個ずつならコガマ(ヒメガマも1個ずつ)である。 花粉の比較
参考資料→種子の散布の様子(動画) ※本日(2012.7.21)、コガマを花粉から同定することができたのでコガマのページを追加掲載できた。しかし、柏崎市街地周辺の種であり、石黒のコガマは未だ確認していない。 (上写真2005.9.18居谷 右上2005.7.3落合 右下2005.10.29大野)。 ガマの基部 写真2009.8.19居谷 花と包 写真2009.8.19居谷 ガマの根の様子 写真2010.5.18 落合 政栄 根の様子がわかる生え方 写真2010.6.11 下石黒川 ガマとコガマ ※同所で生えていたのでガマとコガマではないかと思うが正確な同定は花粉の形を調べなければできない。 来年の花期には調べてみたい。 写真2007.8.12 寄合 海岸のガマ 写真2012.10.8 笠島 |
解 説 ガマ科 北海道から九州までの各地の池や沼、休耕田などに生える多年草。 根茎は泥の中によこたわって伸び白色である(左下写真)。 茎は円柱形で直立して緑色で高さ1〜2mある。 葉は長い線形で緑色、やや厚く白味を帯び茎より高く伸び幅2pほどで毛はない。先は鈍頭で下部は長い鞘状で茎を包む〔左下写真〕。 花期は6月〜7月。花茎の先に穂をつけ早落性の包葉が2〜3個ある〔左下写真〕。雄花穂は上部につき黄色で細く長さ7〜12p。 雌花穂は雄花穂と密接して(左下写真)長さ15〜20pほどの円柱形で緑褐色。花は小形で花披はなく 雄花は3個の雄しべと剛毛からなり、花粉は黄色で4個が合着している。 雌花には長い柄があり小包はなく子房の先の長い花柱の頂に柱頭がある。 果穂は無数の果実を含み赤褐色の円柱形で長さ20pほどあり上部に針状の雄花花軸が残る。 果実は紡錘形で淡黄褐色の基に長い白色の毛がある(下写真)。白い綿毛のついたおびただしい数の種子を風に乗せてまき散らし繁殖する。 名前の由来は、朝鮮語のカム(材料)の意味で、ガマの葉を編んでムシロや敷物を作ったことによると言われる。 同種にコガマがあるが全体が小型、特に雄花(花の上の塔状のもの)が短い。くわしい区別は花粉がガマは4個ずつ合着しているがコガマは分離していることで確認できる〔下写真〕。 ヒメガマの見分け方は雄花と雌花の間が離れていること〔下写真〕。 花 写真2010.10.25下石黒 雄花と花粉 写真2007.6.20上石黒 4個が合着している花粉 写真2012.6.15 採取地下藤井 種子散布の開始 写真200710.10.21 下石黒 種子 写真2010.10.25 下石黒 比較画像→ヒメガマ 写真2005.8.11上石黒 |