フトヒルムシロ | |||||||
暮らしとの関わり 昔の石黒には「ど」と呼ぶ小さな用水池が数多くあった。その用水池にはフトヒルムシロが繁茂したものもあった。(フトヒルムシロは水田には生えない) 子供の頃、池にルリボシヤンマを捕りに行くと、このフトムシロの葉の上に美しいエゾイトトンボがたくさんいたものだ。〔下写真〕出来るだけ目を近づけて見ると、エゾイトトンボもルリボシヤンマ同様、絶妙なスカイブルーの体色をしていた。 その色は、単なるスカイブルーではなく、この世の色とは思えない神秘さをたたえた色彩であるように自分には思われた。 古希を迎える年令となり、ふと、遠い子ども時代の暮らしを懐かしむ時、エゾイトトンボとフトヒルムシロの葉は、夏の思い出の一コマの中に鮮やかによみがえる。 フトヒルムシロ撮影の池(落合向山) . 写真上2004.8.2落合 右上2005.10.7落合 右下2005.7.21寄合 全体の様子 写真2006.10.19落合 1節ごとから水中茎を出す様子 写真2006.9.29落合 水中茎と水中葉 写真2006.10.19落合 ※左の緑色の草はイボクサ 花と果実
長い水中茎 写真2010.6.9落合 クロスジギンヤンマの産卵 |
解 説 ヒルムシロ科 全国各地の山地の池や沼に多く生える多年草。水中の茎のまま越冬。 地下茎が水底の泥の中をはい1節ごとに水中茎が伸び〔左下写真〕、その長さは水深によって2mにも達する。 葉は、下部につく沈水葉は互生し葉の基部が柄に変わる〔左下写真〕。浮葉直下の1〜2枚をのぞき葉柄はなく狭長楕円形ないし広楕円形、鈍頭、葉縁はやや波打ち、基部は円形または心形をなす。長さ5〜13p、幅2.5〜4pほど。生育条件の悪いところではヒルムシロと区別できない。托葉は長さ5〜10pで膜質(左下写真)。 花期は4〜6月。水上に、こん棒状の黄緑〜赤銅色の穂状花序をつける。花茎は5〜15p。 花序は3〜5pで小花は4心皮からなる両性花。雄しべ、雌花ともに4個。〔左下写真〕。花序は花が終わると沈水して水中で朱色に熟す。 開花とともに浮葉は枯れて果実の熟すころに新葉を出す。 果実は長さ3〜4oの扁平な球状。4個ずつつき背面に鋭い狭翼がある。 名前の由来は花穂の上にヒルが乗っていることがあることから「ヒルのムシロ」の意味からとの説がある。 開きつつある葉 写真2005.9.29落合 葉の表裏 写真2010.6.9落合 葉の付け根の托葉 写真2010.6.9落合 こん棒状の花序 写真2010.6.9落合 |