ニホンヤモリ
暮らしとの関わり
 「ヤモリ」という名前は子どもの頃から聞いてはいたが実際に見たことはなかった。文献によると新潟県には少ないが、柏崎市、出雲崎などの古い民家に発見されることが多いと記されている。
 一方、石黒では、ニホントカゲニホンカナヘビ、また、クロサンショウウオイモリなどは庭やタネ(家の後ろにある池-タネ)で普通に見られたので、子どもの頃から親しんできた。それだけに、ヤモリにも何とか出会ってみたいものと思っていたが、願いは叶わず半ば諦めていたのであった。
 ところが今日(2023.6.20)、妻が「車庫の脇のコンポスタにヤモリがいる」と言うので急いで行ってみると、一匹のヤモリがコンポスタに張り付くようにしてじっとしている。これが私にとってはヤモリとの初めての出会いであった。思いもかけない幸運に感謝した。
 私は、相手を刺激しないように留意して目を近づけて観察した。すると意外なことに前脚の片方が食いちぎられたように半分以上が欠損している事が分かった。さらに、その部分をよく観察すると失った足の指の1本が再生しつつあるように見える。(下写真参照)
 ちなみに、WEB上の解説では尾以外の再生は出来ないとある。
(※ちなみに別種のイモリは尾のみならず、足や目、心臓も再生もできる能力を持っているがヤモリにはその能力はないとされている) 
  だが、この写真を見る限り、ヤモリにも足の再生能力があるのではないか、と思ってしまう。
矢印の先の部分を見てもらいたい。1本の再生した尖った爪らしきものが見られる。どうやらこちらの掌の部分のすべてが欠損しているが、そこから尖った爪らしきものが見られる。
 さらに、詳しく観察するために、個体の入れるための虫かごを探すためにほんの2~3分その場を離れた後に戻ってみるとヤモリは姿を消してしまっていた。近くを念入りに探したが発見できなかった。逃げないように近くあった植木鉢でもかぶせておくべきだったと思ったが後悔先に立たずだ。
 その後、2か月ほどたった頃、同じ場所の近くで別の個体と出会うことが出来た。こちらは両手の指が正常であり、先の個体とは異なることが分かった。のみならず、茶色の土の上にいたせいか体色が茶色であった。ヤモリは周囲の環境変化により体色を変えることが観察できた。

 上写真 2023.6.20 柏崎市


        地面に下りたニホンヤモリ

 撮影日 2023.6.20 柏崎市


撮影日 2023.8.2 柏崎市松美町

 解  説
ヤモリ科
 ニホンヤモリ
 名前は「ニホンヤモリ」であるが日本固有種ではない。
 秋田県以南に見られるが自然分布か人為分布(船の積荷などにより持ち込まれること)によるかは判然としないといわれる。(※人為分布の時代は平安時代の頃との説がある)
 最近は北海道でも確認されたとの情報がある一方、複数の都道府県で準絶滅危惧種に指定されたとの情報もある。
 新潟県には生息数が少なく、柏崎、糸魚川、出雲崎など港町の古い民家で発見されることが多いといわれている。
 体の長さは8~13㎝で細長く平たい。皮膚全体が鱗に覆われていて乾燥に強い。(下写真)
指は独特の吸盤があり垂直のガラス面も上ることが出来る。夜間の電灯の明かりに集まる昆虫などを食べる様子が観察される。
 環境により体色を変化することが出来る。左下写真
 また、尾は自切と再生を行なうことが出来る。1年に1~2回産卵して産卵数は2個ほど。
 名前の由来は「家守→やもり」家の中に潜む害虫を食べてくれる動物として親しみを込めて呼んだ事に依るものと思われる。



 鱗で覆われた皮膚の表面
 写真 2023.6.20 柏崎市