イモリ(アカハライモリ)
暮らしとの関わり
 イモリは子どもの頃から、ふつうに見られた生物である。   当時(昭和前期)はどこの家にも「タネ」と呼ばれる小さな池が家の裏にあった。そこにはいろいろな昆虫や水生動物、爬虫類、両生類などが見られた。
 子どもたちにとってはタネは飽きることのない楽しい遊び場であった。また、そこに住む生物によって自然の営みを一年を通して観察できる貴重な場所でもあった。
 そのタネにイモリは沢山生息していた(産卵期)。しかし、子どもたちにとってはイモリは人気ない生き物であったように思う。肺呼吸のイモリは時々、水面に垂直に浮上して空気を吸うがその折に腹の赤さび色の紋様がはっきりと見えた。
 ところでイモリはフグの毒と同じテトロドトキシンという毒をもっているという。いわば、腹部の赤さび色の紋様は敵に毒を持っていることを見せつけて撃退する警戒色である。確かに我々子どももこの色を毒々しいものに感じて敬遠した。イモリの警戒色は人間にも通用したということができる。
 また、イモリの体の再生能力には実に驚くべきものがある。
失った足のみならず欠けた目や心臓や脳までも再生でき、しかも一生を通じて何度も再生できるというから驚く。更にイモリには、異常な細胞を取り除く機能がありガンにはならないといわれている。
 それほど遠くない将来、イモリの再生能力を応用した再生医療により人間の寿命は限りなく伸びるかもしれない。
 それにしても、子どもの頃から敬遠していたイモリにこのような常識では考えられない優れた能力があるとは意外というほかない。
写真 写真 2018.5.6 下石黒

        下石黒 道普請時に側溝にいたもの

 写真 2018.5.6 下石黒

 
解 説
イモリ科
 本州、四国、九州に分布。池や沼などでふつうに見られる。
 体長8〜12p。背は黒色で腹は赤色に黒色の不規則な紋様がある。(下写真)
 5〜6月に水草を折り曲げて畳むようにしてその隙間に卵を1個ずつ産み付ける。
 また、産卵期にはオスの尾、まれには体全体が紫色に変わる。産卵時にはオスがメスの進行方向を遮るようにして動きを止めて尾を左右に振って関心を引く。メスが応じて後について来ると精子を放出してメスはこれを尻穴から取り込み卵を体内で受精させる。
 寿命は長く、15〜20年で、現在では最大の天敵はアメリカザリガニと言われている。
 名前の由来は「家守→ヤモリ」に対して「井守→イモリ」、どちらも害虫を食べてくれることから「家を守る」と「井戸を守る」の意味と言われている。別名ニホンイモリ



   腹部の赤色の紋様

写真 2018.5.6 下石黒