ワラスグリ具 
 冬の藁仕事は、まずワラスグリから始まる。藁のサヤ(袴部)の部分をしごいて取り除く仕事だ。そのときに重宝なのが上の写真の道具であった。
 藁の上部を持ってこの道具で髪の毛を櫛でとかすようにすいてやる。とれたサヤの部分はくず布団などに利用した。しかし、1〜2束〔16把〕程の少量のワラであれば手ですぐることもできた。写真のような用具を使っても仕上げは手で細かなクズを取ってやる必要があった。
 石黒では、稲は8把で一束としたが、すぐった藁は量が減るので2把を1把にしたものだという。
 ワラスグリは、年の暮れには、どこの家でも藁布団に入れるためにまとまったクズ(稲の袴の部分)まとまった量の藁をすぐったが、その他は、藁仕事で必要に応じてすぐり、ジョウヤイシ〔土間に埋め込まれた平らな石〕の上で横ずつを使って藁たたきをした。
 子どものころに、生家の二階の寝室で目が覚めると夜明け前の暗いうちから隣家の藁たたきの音がしたことを憶えている。
 また、能率を上げるために臼を逆さまにしてその上に千歯を固定してやることもあった。しかし、センバを使うと目が細かいために稲の節の部分から出る葉も取り去ってしまうことがあるので大量に行う場合以外は、本ページ掲載のような造りのワラスグリ具を使用した。