民具補説 ヒロロとヒロロミノ ヒロロ(ミヤマカンスゲ)は常緑で葉が濃緑でカサカサした感じの植物です。山野や家の周りに自生していますが、どこにでも生えているというものではなく、所々に株立で小さな株、大きな株となって自生しています。家の周りのものは昔、移植して栽培していたものがほとんどです。 昔は、ヒロロミノの材料にするために真夏になると競ってヒロロを刈り取り、乾燥したものでした。天日に干すので仕上がりは白っぽい色となります。 冬になりますと干して保管しておいたヒロロを材料にヒロロミノを作るのでした。
先ず、大きな箱形(直方体)の木の台の上に楕円形半円の突起した型(下図参照)に丈夫な縄をまき、その縄にヒロロの葉を2〜3枚、あるいは3〜4枚重ねて、ねじりをかけて、その元の所をていねいに編みます。その部分が首の周りにあてる部分となるのです。首の周りから肩まではヒロロで編みますが、その下の部分はワラを少しずつヒロロに混ぜて長くするのでした。 このミノは一般に「まわしみの」と呼ばれ、おもに田の水見など大雨の場合に着るだけで他の仕事をするときにはほとんど着る事はありませんでした。 ヒロロを採るのが大変なのでどこの家でもヒロロミノは大切にして玄関のミノ掛けに掛けて置きました。 私たちの子どもの頃の思い出の中には、ヒロロミノを着て菅笠をかぶり烈しい雨の中を裸足かワラジ履き、あるいはアシナカ草履をはいて鍬をかついで早足で水田の水見をしてまわる大人の姿が今でも動画のようにありありと浮かんできます。 また、石黒には、ヒロロと同類の草でタツノケ(コシノホンモジスゲ)と呼ぶヒロロの葉の3分の1ほどの幅のスゲが沢山自生していました。この草も株立で常緑でしかも割合と長く、山菜採りではこの草につかまって崖を登ったほどでした。このタツノケを使って、ミノボウシを作って冬季に利用していました。ミノボウシは温かく雪が付着せず、長持ちのする優れた民具でした。 文・図 田辺雄司(居谷) |