トベラ | |
暮らしとの関わり 柏崎市街地でトベラに初めて出会ったのは、市内四谷の人家の生垣の個体であった。葉を見て下面に巻き込んでいる様からシャクナゲの葉を連想した。 その後、市の海岸公園に植えられた大株(高さ1.5m)のトベラを見て輪生状についた艶やかな葉が美しい木だと思った。 しかし、トラベは柏崎市の海岸では、もともと自生していない植物なのであろう。なぜなら、1981刊の「柏崎の植物」の索引にはトラベの名前は見えるが「栽」とあるからだ。 WEV上のデータには佐渡の相川には自生しており、かつて樹高5mのトベラがあったと記されている。現在では樹高4mのものが9株ほどあるとのことだ。(http://blogs.dion.ne.jp/lllo/archives/2005-11-10.html) 柏崎市では、公園などに植えられている個体の外は、筆者が歩いた範囲においては保安林のクロマツ林の縁や中に稀に見られるがが、自生状態と言える個体には出会ったことはない。今後も留意して歩いてみたい。 なお、東電原発の敷地周辺の環境保全林にもトベラは利用されている可能性はあるがその生態も調べてみたいものである。 さっそく、東京電力にお願をいして2012.10.25日に担当の方のご案内のもとに見学をすることができた。420万uの広大な構内の3カ所に植栽されていたが個体数では最大級のもの。とくに海岸側の中央展望台付近には、まとまった植栽トベラが見られる。また、その付近の道路沿いには樹高3mを超えると思われる個体も見られた。 その後、樹高4mはあると思われる街路樹を鯨波地内で見た(左下写真)。 一昨日〔2015.12.15〕鯨波海岸からの帰りの道沿いに植えられたトベラがザクロの種子のような赤い種子を見せていた。トベラの種子はザクロとは異なり種子を包む果肉もなく鳥たちにとっても魅力のないものであろうが、どのような手段で種子散布を行うのであろうか。種子の強い粘着力にそれを解く鍵がありそうだ。鳥などの動物に付着するのか、地上に落下して動物の足などに付着するのか、あるいは落葉などに付着して強い海風で飛ばされて散布されるのか 興味深いところだ。 〔写真 2014.2.1 右上2010.6.4 柏崎裏海岸〕 新芽のころ 写真2015.4.18裏海岸 枝の上部に密生して付く葉 写真2010.7.10海岸公園 ツボミの頃 写真2012.5.25海岸公園 開花の頃 写真2012.6.4海岸公園 東京電力柏崎刈羽原子力発電所構内のトベラ 写真 2012.10.25東京電力原子力発電所構内(刈羽村) 高さ3mの大木 写真2013.7.5中央海岸 高さ2.5mほどのトベラ 写真2012.12.17松波海岸 たわわについた果実 写真2014.8.27柏崎市海浜公園 冬まで残った果実 写真2014.1.29荒浜海岸 写真2015.12.15裏海岸 果実は3個に裂けるが2個に裂けるものもある。 写真種子2012.11.22松波海岸採取 |
解 説 トベラ科 本州の太平洋側では岩手県、日本海側では新潟県以西の海岸に自生、あるいは栽培されている常緑の低木。雌雄異株。 高さは2〜3mほどで下部からよく分枝する。 葉は倒卵形、または長楕円形で互生し、枝の上部に密生してつき(左下写真)長さ8〜10p、幅2〜3cm。全縁で表面には艶があり先端は円形で両面無毛、縁は下面に巻き込む(左写真)。 花期は6月。新枝の先端に集散花序をつけ白い花を上向きに多数つける。花には芳香があり白色から黄色に変わる。ガク片は5個で卵形、先端は鈍形で縁には毛がある。花弁はヘラ形で花爪があり上部は開平ないしはそりかえる。 雄しべは5個、雄しべでは長く、雌花では小さく。子房は卵形で3心皮からなり花柱は1個。雄花は実らない。 果実は球形、直径10〜15mmほど。熟すと3個に裂けて赤くて粘った種子を出す(下写真)。 名前の由来は、節分にこれを扉にはさみ、鬼除けをする風習があり「トビラノ木」が語源。 ※花には芳香があるが、枝葉を焼くと悪臭を発するとのことであるがこの事と悪除けと関係があるようにも思われる。 新芽 皮質で裏部に反った葉 雄花 写真2012.6.4海岸公園 花は白から黄色へ変化写真2012.6.14鯨波海岸 夏の頃の実 写真2013.7.20海岸公園 高さ4m余の大木 写真2013.7.鯨波道路沿い 果実と種子 写真2012.9.11海岸公園 熟して三裂した果実 写真2012.10.25東電構内 写真2015.12.15中央海岸 表面に粘りのある種子 写真種子2012.11.22松波海岸採取 翌春まで残った種子 写真2015.3.1海浜公園 |