アケビの利用

  石黒のアケビ(ミツバアケヒ)の蔓には私の観察では、地面を這うものと木に巻き付いて上るものがあります。
 木に上る蔓はあまり背の太く高い木には絡みつかず低木にからみつき5月の終わり頃花をつけます。
小さな紫色の花をたくさんつけますが、雌花の全部が実を結ぶものではなく、所々に2個、3個と実を結びます。1個のものもあります。
 初めは、明るい緑色をしていますが、虫に食われることもなく成長して9月下旬の稲刈り頃に皮が美しい紫色になります。林の縁や低木の中に多く見られます。

 子どものころには、熟した果実を採って真ん中の白い筋のところを左右に開くと中には白乳色の丸い棒状の果肉がありました。その中にはたくさんの黒い種がありますが口の中にいれて甘い汁だけの飲み込み種は吐き出すのでした。
 昔は少し大きくなった果実を漬物にするとか、紫の皮を料理した食べたとも聞きました。
 今考えて見ますと昔は野山の自然の恵みを様々に利用して生きてきたのだと思います。特に凶作時の恐慌植物としては、多くの植物が食料として利用されたものと思われます。
 また、このミツバアケビの這い蔓は、秋に採取して水に浸して皮を取り去り、その強靭なつるで背負いかごの用材にしたり、いろいろな篭を作ったりしたものでした。

(文 田辺雄司  居谷在住)