ヤマトミクリ | |
暮らしとの関わり 石黒では、稀にしか見かけない希な植物である。上の写真は上石黒の高床で撮った。 ヤマトミクリは、ミクリに比べて小型でやさしい感じの植物である。 ヤマトミクリと同定したポイントは、花序が枝分かれせず一つの茎に果実が並んで形成されること。雌花が主軸と合着していて茎がジグザグ状に曲がっていることである(下写真)。 2006年に、筆者がここを訪れたときには、20aほどの小豆畑の山側に広さ10aほどの池があった。様々な水生昆虫が見られ特にたくさんのトンボが舞っていたことを憶えている。 当時、85才のこの畑の耕作者Tさんがこまめに池の周りの草刈り等をされていて、水性動植物の恵まれた生息空間であった。しかし、2009年にTさんが亡くなられると、重機で池も耕地整理されて蕎麦畑に変わり、池とともにヤマトミクリも姿を消してしまった。 お盆が過ぎると、さすがの猛暑も和らぎふと秋風を感じるようになった。今日(2015.8.19)、散歩がてらに藤井の田んぼ道を歩いていると水路に生えた小形のミクリと出会った。草丈は40〜50pであり石黒で出会ったヤマトミクリに比べてずっと小形であるのでヒメミクリかと思った。しかし、30本ほどの花序があったが枝分かれしたものが見られないこと、最下段の雄花に柄があることなどからヤマトミクリと同定した。(下写真) 〔写真2006.7.11上石黒・高床〕 花期 写真2006.7.11上石黒 ヤマトミクリの群生 写真2006.7.11上石黒 小形の個体 写真2015.8.19藤井 |
解 説 ミクリ科 本州、四国、九州の沼やため池など生える多年草。 茎は直立して高さ40〜80cmで走出枝を出して繁殖する。 葉は立ち下部は直立して茎より高くなる(左上写真)。根出葉は長さ40〜100p、幅5〜20oで裏面に稜がある(左写真)。通常は水面を突き抜けて立つ。 花期は6〜8月、花茎は30〜60pで直立する。 花序は分枝せず最も下の包の長さは20〜35pに達する。枝の下部には3〜6個の雌性の頭花を、上部には5〜9個の雄性頭花をつける(左写真)。 雌花の花披片はさじ形で長さ3.5〜5.5o。花柱と柱頭の長さは約2o。雄花には、6o以下の花糸をもつ雄しべがあり(下写真)、葯〔花粉袋〕の長さは1〜2o。 果実は紡錘形で、長さ5〜6o、幅2〜2.5o。 名前の由来は果実〔集合果〕が栗のイガに似ていて特に大和地方に多いことによる。 雄しべ拡大 写真2006.7.11上石黒 花期を過ぎた雄しべ 写真2006.7.11上石黒 雌性花序 写真2006.7.11上石黒 果実期と花期比較 写真2015.8.19藤井 最下段の雌花の柄 写真2015.8.19藤井 |