油脂職部物

トウゴマ(栽培種)
 トウゴマは、筆者が子供の頃(1945-昭和20年前後)によく目にした植物である。その巨大な葉と毒々しい感じのする草姿の強烈な印象は今でも記憶に鮮やかである。
 当時は、太平洋戦争中、敗戦が近い頃でトウゴマの種子から採った油は、上空の低温中でも固まりにくいことから飛行機の潤滑油の原料とし栽培されたのであった。
 その頃は、すでに戦況は悪化しており、トウゴマの他に松脂や松の木の根に飛行機の燃料を求めていたほどであった。
 その他、日用品も極度に不足していたため、サトウキビやワタ(綿)などの栽培もおこなわれた。

写真2015.9.25 市街地周辺


                果実期の頃

写真2015.9.25 市街地周辺




解 説
トウダイクサ科
 アフリカ北東部原産で油脂植物として栽培される一年草
 茎は太い円柱状で高さは2mほどで、まばらに分枝する。
 葉は互生し長い柄をもち大型掌状で5〜11に裂け、縁には鋸歯がある。色は緑色または褐色で毛はなく光沢がある。
 花期は8〜10月。茎の先の方から下部へと順に直立した花穂をつける。雌花を上部に雄花を下部につける。雄花は5個の花弁をもち花糸は多数に分かれて黄色のをつける。その数は1500以上もある。雌花は小さな5花被片からなり子房は肉質の毛をもち3室になっている。
 さく果には通常トゲがあり、中には3個の種子をもつ。形は楕円形で光沢があり黒褐色の斑点がある。学名はダニを意味するといわれるが種子はダニに形や模様が似ている。
 名前の由来は「唐胡麻」で中国から渡来したことと種子から油を採ることによる。