タネツケバナ | |
暮らしとの関わり 昔から、タネツケバナは、春早くから秋遅くまで田畑に生える害草として憎まれてきた。 しかし半年以上深い雪に覆われる石黒では、他の草が枯れ果ててしまう初冬も青々として生長を続け開花するこの草に、不思議な魅力を感じたものであった。→早春のタネツケバナ 子どもの頃からこんなに小さな草の花と棒状の果実を知っていたのはそんな心情で観察していたからであろう。 そんな訳で沢山のこん棒状の果実をつけるのことから「タネツケバナ→種付け花」と勝手に解釈して疑わなかったが、この歳になって「種(籾)浸け花」であることを知って驚いた。 しかし、考えてみれば種をつけるのはほとんどの野草に共通のことであり根拠のないことである。 同様な誤りに気付かなかったものに「ミソハギ→溝ハギ」がある。お陰で、「草の名前に止まらず、人間を含めた動物にたいしても、自分は些細な根拠から様々な誤解の虜になっているのではないか」という自戒を念を得たような気がする。 なお、牧野図鑑には「オオバタネツケバナ」、「オオケタネツケバナ」などの近似種が掲載されているが本欄では区別していない。 しかし、調べて見ると、ミチタネツケバナが最近(1970年代)に欧州から渡来し急速に日本各地に広がっているようだ。 今後注意して観察してみたい。新参者を見分けることが出来ないでは在来種に対して申し訳ない。 〇ミチタネツケバナの特徴は、 @乾燥したところに生える。 A雄しべは4本。 B花は、平開しないでまとまって咲く C茎は無毛 。 D茎葉は細長く少ない。 E果実の時期にも根上葉がある。 F果実は、茎に沿うように直上する。 (写真上・右下2005.5.12上石黒 右上2005.4.5下石黒) 早春から開花する 写真 2019.3.6 新田畑 写真 2016.3.11 西中通 市街地のタネツケバナ 写真 2020.4.1 新田畑 背景山−黒姫 花期のころ 写真 2006.5.18 上石黒 早春の田の畔で開花 写真 2011.5.12 上石黒 葉の上部から基部の葉の形 写真 2011.5.12 上石黒 放棄田に見事に群生したタネツケバナ 写真 2009.5.11 上石黒−記録的小雪 果実期 写真 2009.5.19 下石黒 果実期 写真 2012.5.10 下石黒 ※果実の付き方からミチタネツケバナか (下写真も) 種子散布後の個体 写真 2009.5.28上石黒−記録的小雪 |
解 説 アブラナ科 日本全国の休耕田や湿った土地に生える越年草。 茎は真っ直ぐに立ち基部から分枝し高さ10〜30p。下部には短毛がある〔下写真〕。 葉は互生し羽状に小さな葉が7〜10個つき先端の葉は大きく下部の葉は小さい〔左下写真〕。小葉の形は円形〜長楕円形など変化に富む。葉の縁は全縁、ときには波状縁、あるいは浅い切れ込みがある〔下写真〕。下部の葉の長いものは7pほどある。 花期は3〜5月。花弁は4枚。枝の先にかたまるように小形の十字形の花を10〜20個つける。ガク片は暗紫色を帯び長さ2o。花弁はガク片の約2倍で長さ3〜4o。上写真〕。 花が終わると長さ2p、径1oほどの棒状の果実をつける。熟するとサヤが割れゼンマイのように巻いて種子を飛ばす。飛び出した種子は表面が粘り付着する(下写真) 名前の由来は苗代の籾を水に浸ける頃に開花する事による。農作業が忙しくなる頃に咲くので「嫁泣かせ」の別名もあるという。 茎基部の毛 写真2009.5.8下石黒 開花 写真2016.3.11西中通 早春のものは小型のようだ 写真2019.3.6 新田畑 花の大きさ 写真2006.5.18上石黒 花から果実へ 写真2021.4.3新田畑 ミチタネツケバナか 写真2019.3.19下藤井 果実と種子 写真2009.5.8下石黒 種子の拡大画像 写真2010.12.8田塚 冬のロゼット状の個体 写真2014.1.1田塚 市街地の水抜き穴に生えた個体 写真2019.4.4松美町 |