ショウブ
 昔の石黒では、タネ(家の後ろや脇の池)などにショウブを植えておく家が多かった。それは、端午の節句(月遅れで6月5日頃)に子どものためにショウブ湯をたてる慣習があったからである。→子どもの暮らし
 石黒で行われたショウブ湯は、ショウブとヨモギを束ねて風呂に浮かせたものであった。田植えの忙しい時期であったが、多くの家々では子どもの健康を願って菖蒲湯をたてた。
 明るいうちに風呂に入るのは、大晦日と小正月と、この端午の節句くらいのものであり、子ども達には楽しみな日であった。
 低学年の頃に、村道で仲間と遊んでいると、仲間の一人が風呂に入るよう呼ばれて帰ると皆が一斉に遊びを止めて帰路についた。
 ホトトギスが頻りに鳴く、暮れなずむ深緑の村風景が70年を経た今も鮮やかに心に蘇える。
 石黒では、ショウブは「よ(湯)立てショウブ」と呼んでハナショウブ(ショウブとはまったく別種)と区別していた。


(写真2015.5.18下石黒)


                  若葉

写真2017.5.5下石黒

        タネに生えたショウブ
写真2015.5.18下石黒

                花序

写真2016.5.11 夢の森公園


解 説
サトイモ科
 日本全土の池の縁や溝などに多年草。
 根茎
は白色で太く、泥の中を横に長く伸びる 節が多く下方にひげ根がある。
 葉は根茎から多数出て直立し高さは70p、幅は1〜2pほどで先端は剣形で鋭く尖る。全体に芳香がある。
 花期は5〜6月。花茎は葉に似ているが、細く短い。花は無柄の肉穂花序をつける。長さ5pほどで円柱状で淡黄緑色。花序の基部には苞が1枚つく。花軸にぎっしりと小花がつく。花は両性花花被は6片、6個の雄しべはとびだしてつく。花糸は白くは黄色い。雌しべは1個。子房は円状楕円形で頭状の柱頭がある。
 果実はつかない。
 名前の由来はよく似たセキショウの漢名→菖蒲であったことによる。



  鋭く尖り剣のような葉

写真2010.5.30下石黒