ハコベ・コハコベ(ミドリハコベと区別しないで掲載)
暮らしとの関わり
 ハコベは、石黒では「ヒョッコグサ」と呼んだ。
 筆者が子どもの頃(1945年ころ)には、家畜のニワトリの餌にハコベを細かく刻んで不稔籾、コヌカ、残飯などと混ぜて食べさせた。とくに早春に採ってきて食べさせると、青物のない冬期は薄黄色だった卵黄が驚くほど鮮やかな黄色となった。
 また、子どもの頃に親に言いつけられて、畑の縁などからハコベを採取してきて鶏小屋に束ねて下げてやると十数羽のニワトリが、どっと寄ってきて争うようにして食べたことを憶えている。
 この事と、方言名「ヒッコグサ」の由来と関係があるかも知れない。
 また、子どもの頃には春の七草にハコベが入っていることは知っていたが、それがヒッコグサとは夢にも思わなかった。 多雪地帯の石黒では、正月の七草〔2月7日〕には最も積雪が多い時期で3m余の雪に埋もれていたのだから無理もない。
 ちなみに、牧野植物図鑑には、ウシハコベなどハコベと名の付く植物が12種類掲載されているが、ハコベ、コハコベ、ミドリハコベは一まとめにして解説されている。
 筆者の観察では早春に最も早く姿を見せるのはコハコベのように思わる。このことから、春の七草のハコベはコハコベのことではないかと想う。
 ハコベは、昔も今も、春から秋にかけて、畑や庭に一年中種子によって発生するので厄介な雑草でもある。柔らかで、とても軟弱な雑草にみえるが、茎には意外に強靭な維管束が通っているため、見た目よりも強い。
 

写真2005.5.5下石黒 


           開花前 (ミドリハコベ)

写真2009.4.16.下石黒

           春の頃の花(コハコベ)

 写真 2019.3.6 新田畑

              ミドリハコベ

写真2009.4.16.下石黒

       花のつくり(花弁が10枚に見える)
写真2009.4.16.下石黒
解 説
ナデシコ科
 日本全国の各地に自生する一年草または越年草。ミドリハコベはやや大形。
 道端や畑などに普通に見られる。春の七草の一つ。茎も葉も軟らか。
 根はヒゲ状。
 茎は下部は横臥して著しく分枝して群がる。高さ10〜30p。茎の片側に短毛がある〔左写真〕。 茎の中には糸のような維管束がある〔下写真〕
 葉は対生し先はとがる。下部の葉には柄があるが上部のものには無い。葉の長さ1〜2p、幅8〜15o。先端は尖る、両面とも無毛。
 花期は3〜9月。花は集散花序状につき花弁は白色で5枚であるが、深く裂けているため10枚の花弁に見える(上右下写真)。 は葉状。ガク片は楕円形で長さは3〜4o、先は鈍形で先はやや鈍頭外面に毛がある〔左写真〕
 雌しべは1〜7個。花柱は3個〔上右写真〕
 さく果は卵形で6裂して種子を落とす。種子はハコベに比べやや大きく突起が鋭い。
 名前ミドリハコベは、茎がハコベが紫色であるのに対し緑色であることによる。一般にハコベとは区別しないことが多い。



     横からの様子
写真2010.5.12.下石黒

    茎の片側の短毛
写真2009.4.16.下石黒

 茎の中の維管束〔イカンソク〕

写真2009.4.16.下石黒

 比較資料-ウシハコベの花

写真 2005.11.2 下石黒