クワクサ
暮らしとの関わり
 ふだん見ていても特に印象に残らない草があるものだがクワクサもその一つである。大抵の人はカラムシの丈の低いものかな、と思って見過ごしてしまうだろう。
 しかし、一度、クワクサと知ってから見るとその後は見間違うことはない。草とはいえ、樹のクワと親類だけに葉裏などは桑そっくりである。〔右上写真−クワは子どもの頃から果実を食べたり、養蚕が盛んな時代に育ったために親しい植物であった〕 
 花糸に見られる筋
 
 写真2011.9.4大野
 クワクサは、雄花と雌花が混在していて雄花の二つ折りになった4個の雄しべが急に開いて、その勢いで花粉を飛ばし雌花がそれを受け止めるという。あるブログを読むと、その開く様子が肉眼で見ることが出来るとのこと、来秋は是非観察してみたい。
 確かに、今まで取った写真を観察してみると雄しべには長い花糸があり、拡大して見ると折りたたまれていたような筋が見られる〔左上写真〕
 来年秋こそ、この小さな花に秘められた受粉の精巧なテクニックをこの目で確かめたいものだ。〔2013.1.25〕。
 
(写真2005.9.29居谷)


          果実期のクワクサの群生

(写真2007.10.2落合)

           互生する葉と草姿
写真2007.9.12下石黒

         花序・つぼみ〜花〜果実へ

写真2011.9.4大野

              全体の姿

写真2010.10.23下石黒

      分枝する根

写真2009.10.7下石黒
解 説
クワ科
 本州以南の畑の周りや道端に普通に見られる一年草
 茎の高さは30から80p。
 根は分枝し(左下写真)、茎は直立してまばらに分枝し緑色、ときには暗紫色をしていて細かな毛がある。皮には弱い繊維がある。〔下写真〕
 葉は互生し長い柄があり(左下写真)、形は桑の葉に似ていて長さ3〜8p、幅2〜5p。葉面はざらつき微毛があり〔下写真〕縁には鋸歯〔鈍角〕がある〔上写真〕。葉質は薄くてざらつく。
 花期は9〜10月。葉の脇から出た枝に花弁のない淡緑色の細かい花がかたまってつく。雌雄同株で雄花雌花が混在してつく。
 雄花には4つに深く裂けたガク片があり花弁はない。雄しべは4個ありガク片対生しガクよりもやや長くつきだし花糸は細く(やく)は小さい。〔左下写真〕雌花には舟形のガクがあり下部がふくらんで中に円形の子房が1個ある。
 果実はそう果。種子は1個で熟すとはじき出される。
 名前の由来は葉が桑の葉に似ることによる。




   よく花のついた個体

写真2005.9.29落合


     雄しべと雌しべ
写真2011.9.4大野

      葉の微毛

写真2009.10.31下石黒

  茎の開出毛と皮の繊維

写真2009.10.31下石黒

   はじき出された種子
写真2009.10.12下石黒