キンラン
暮らしとの関わり
 石黒では、珍しい植物の一つである。上の写真は下石黒集落のブナ林の沢沿いに生えていた3本のうちの1本である。
 石黒ではブナ林の周りなどの薄暗い所に見受けられ、黄色い花がよく目立つ。
 2009.5.18日正栄さんと落合〜寄合の旧道を歩いた。いたるところで数十メートルに渡って道路が崩落していて難渋したが、ようやく難所を切り抜けたところででうす暗い古道の真ん中にキンランが光るように咲いていた。低木に深く覆われた暗い道に灯された一本のロウソクを連想した。→古道に咲いたキンラン
 石黒では、キンランは、かつては珍しい植物ではなかったが1990年代以降、個体数を急減させた。好事家による乱獲によるものである。
 キンランの栽培は非常に難しいがその原因が最近明らかになったという。それは、共生する菌が普通の腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成し、共生している菌であること因るのだという。つまり、特定の生きた樹木の根がなければ生存できないことである。
 環境省レッドデータブックでは、絶滅の危険が増大している種の一つであり、現在、絶滅危惧II類に指定(1997年)されている。

(写真2007.5.22大野)


            花期直前

写真2011.6.11下石黒

       キンランの花拡大写真

写真2007.5.22大野


        葉にある粗い縦じわ

写真2007.5.22大野

        葉の表裏

写真2007.5.22大野

             花期後
写真2009.6.7下石黒

解 説
ラン科
 本州・四国・九州の山の雑木林の中に生える多年草
 根は細く、菌根を形成し、樹木の根と共生し外菌根から栄養を摂取する。
 茎は直立して高さは30〜70p。稜線がある〔下写真〕
  葉は、茎を抱き5〜8枚互生し、長さ7〜12p、幅2〜4p。顕著な縦皺があり、質は薄いが強靱である。〔下写真〕
 花は4〜5月に茎の先に3〜10個ほどの黄色い花をつける。花の大きさは約1pで、半開に留まる。
 包は膜質で三角形で長さ2o〔下写真〕。ガク片は黄色で花弁状、長さ14〜17o。鈍頭、花弁はガク片より少し短い〔上花写真〕唇弁にはがあり〔左写真〕3裂し側裂片は大きく浅く凹んだ広卵形、内側に赤褐色の隆起した筋が数本ある〔上写真唇弁写真〕
 雄しべと雌しべは一つとなって、ずい柱を形づくる〔上写真〕ヤク〔葯〕はその先端の下面につく。子房は花柄のように見えて〔左写真〕後に成熟して果実〔さく果〕となる。
 種子は、種皮とのみでできていて、極微小で多数あり、風によって散布される。
 名前の由来は同じラン科の白い花のギンランに対してつけらたもの。



       茎の稜線

写真2007.5.22大野

     花下の

写真2009.5.18寄合

     果実(さく果)
写真2009.6.7大野


  参照画像-ササバギンラン
写真2007.5.30大野