カマイルカ
暮らしとの関わり
 海岸沿いの駐車場にいました。近くに男の子を二人連れたお父さんがいました。その家族が海に鳥がいると、話していました。この季節、海にカモメの仲間が飛んでいるのは当たり前のことですので、全く気にしていませんでした。しかし、鳥を趣味とする者、放っておくこともできず、双眼鏡を取り出しました。案の定、20羽くらいのカモメたちが飛んでいました。そのカモメたちの下の海面から、1羽、1羽と飛び出すウもいました。ウが捕まえた魚を横取りするカモメを何度か見ていますので、それもあるだろうと思っていました。
 しかし、そのウが飛び出した海面が妙に白波だっていることにも気が付きました。この日は、晴れてはいましたが冷たい風も吹いていました。春特有の気候で、海に多少のうねりがあり、白波もいくつか立っていました。そんな波とも違うように見えたのです。まさかと思いながら、双眼鏡とカメラを持って砂浜を海に向かって歩き始めました。
 波打ち際から20mくらいのところで、イルカの群れがいることを確信しました。せめて、証拠用に背鰭の1枚も撮りたいと思い、その場で何度かシャッターを押しました。次は、逃げないでくれと、願いながら波打ち際に向かいました。1回、行方を見失いましたが、飛ぶカモメに助けられイルカの群れの位置を把握しました。
いわゆる高価なディジタル一眼レフを持っているわけではありませんので、撮影にも限界はありますが、沢山シャッターを押せば1枚くらい人にお見せできる写真を撮れるだろう、という質より量作戦でいくことにしました。イルカは、海中にいて時おり、姿を見せるだけでなく、ジャンプをしたりもしました。ジャンプの瞬間を撮りたいと思ったのですが、毎度毎度シャッター押しが遅れます。それでも、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで、ほんの数枚ですが、ジャンプの写真も撮れました。
口の先が、いわゆるイルカ型のような先細りでないこと、背鰭の後半部が白いこと、そして身体表面の白黒模様などから、カマイルカでいいと思います。このイルカは、早春から初夏に、日本の東北から北陸の沿岸部にやって来るということですので、これにも合致しています。イワシやイカなど食べるそうです。この日、たまたま柏崎沿岸にそういった餌動物があったのでしょう。
5月頃、東北から北陸の沿岸部に来るそうです。イルカは、混獲による捕獲より漂着の方が圧倒的に多く、また漂着全イルカの50数%がカマイルカだそうです。3月から6月に船上で目撃されることもある、ともありました。柏崎での宮崎(宮川の間違い(?)、2011.01.17)、荒浜(2007.07.02)の2枚の漂着写真載っている文献もありました。
2019年4月9日、NHK新潟ローカル610ニュース中の天気予報のコーナーで、柏崎沖で撮影されたイルカの動画が紹介されていました。そのほんの4日後の13日の記録です。運がよかったようです。
 そして、その4日後の17日に、今度は北上する100頭を超えるカマイルカを再び見ました。この日は、暖かく晴れた1日でした。お昼頃に浜に着きました。カマイルカに、再度会えることは全くの想定外でした。穏やかな海面上を数頭くらいの群れでほぼ切れ目なく、次から次へと北上して行きました。大きくジャンプすることもなく、独特の鎌状の背鰭を波間にローリングさせていました。およそ30分間見続けました。それで全群れかどうかは分かりません。この2回の偶然に感謝です。(長谷川)

 貴重な映像を含むデータを頂戴したので、カマイルカの頁を作った。筆者は40年ほど前、佐渡旅行の帰路、船の甲板で心地良い海風に吹かれている折、30〜40mの海面をダイビングする3〜4頭のイルカを偶然に見たことがある。ほんの数秒であったが鮮明にその姿を今も憶えている。鋭い背びれからみて、それはまごうこと無くカマイルカであったと、今、確信することが出来た。

 撮影 2019.5.14 柏崎海岸  長谷川


解 説
マイルカ科
 カマイルカの生息域は、太平洋北半の寒帯から温帯にかけての海域。1年を通して海岸から離れた深海付近の海域を好むが、日本海にも餌となるイワシなどを追って回遊してくる。日本海水域は北限と言われている。
 世界の全生息数は100万頭ほどとみられている。ふつう10〜100頭ほどの群れであるが時には1000頭以上の群れとなることもあると言われている。
 体の表面は白、黒、灰色の3色の斑紋からなる。(上写真参照)
 雄は体長2.5kg、体重は200kg位で雌は雄に比べてやや小型。壽命は20〜40年ほどとみられている。
 餌はイワシやタラ、サケなどの魚やイカ等。
 外敵としてはシャチがあげられるが、かつては流し網によって混獲された。今でも日本海で定置網に迷い込む個体も珍しくはない。それらの個体は各地の水族館で飼育されイルカショーで水中からのジャンプなどの芸をさせている。
 なお、群れの集団内では病気やケガした仲間の世話をする習性(能力?)がある事が知られている。
 いまのところ、生息数は安定しているが海洋汚染などによる減少に留意していく必要があろう。
 名前の由来は、背びれの形が草刈り鎌に似ていることに由来する。(上画像参照)



カマイルカの追う魚に集まる海鳥
撮影2019.5.14柏崎海岸 長谷川

※ビデオ資料−柏崎海岸で見たカマイルカの群れ