ツマグロヒョウモン
暮らしとの関わり
  上写真のツマグロヒョウモンは2005年10月に大野集落の丸小山で撮った。私にとって本種との初めての出会いであった。
 ツマグロヒョウモンの土着地の北限は福井県南部と言われているが、この個体の元親はどこから飛来したものであろうか。
 その後、石黒で私がツマグロヒョウモンを最も早い時期に見たのは6月下旬の頃である。これが土着地から飛来した個体か、または、秋までに4〜5回発生する多化性のチョウ(他のヒョウモンチョウ類のほとんどは年1回しか発生しない)であるというから2代目、3代目の個体か分からない。いずれにせよ、ツマグロヒョウモンは土着地から飛来する個体は少数でも2〜4代目と成虫の発生により数はかなり増加するとみてよいであろう。しかし、私にとっては石黒でも市街地周辺でも、極々稀にしか目に出来ないチョウであった。
 ところが先日(2017.9)、市内豊町にお住いの方から家の近くにいたツマグロヒョウモンの写真をいただいた。「2,3年前から庭で時々見られる」とのことに驚いた。「柏崎・刈羽のチョウ」(柏崎昆虫愛好会−2001年刊)には、「黒滝、小村峠、鯨波などで観察されていが市街地での記録はない」とある。もともと県外の発生地から飛来するものであるからどこで見られても、不思議ではないが、人の目につくことは市街地ではなかったということであろう。(右下写真)
 ところで、2020年9月27日の今日、自宅の庭で作業をしているとヒョウモンらしき1頭のチョウが飛んで来て居間のサッシの上の枠にとまった。ウラギンに比べてやや大型なことから、「あるいは?」と思ってカメラを通して確認すると、まさしくツマグロヒョウモンであった。それも今まで出会ったことのないオスである。82才を過ぎて足腰が弱りフィールドワークもままならず今後の出会いをほぼ諦めていた自分にとってはまさに「僥倖」と書きたいほどの幸運であった。
 先般、このことをフィスブックで発信したところ数名の方々から貴重な情報を頂いた。お陰で、豊町に限らず西港町、小倉町、松美町、北条などでも見られることが分かった。おそらく今では市街地は全域にわたって見られるのではないかと思われる。
 特に、松美町の我が家の近くにお住まいの春口さんからは最近、庭で撮影された写真を数枚送っていただいた中の雄雌・つがいの写真をお借りして本ページに掲載した。(下写真)
 また、千葉県の今泉さんからは、@ 「2008年8月20日に自宅の玄関先のスミレの葉に卵を産み付けているツマグロヒョウモンを初めて見たこと」と、「今では普通に見かけるようになったこと」。A「近年、ナガサキアゲハのような南方系の蝶が現れる(2005年9月28日初見)ようになって驚いている」との貴重な情報を頂いた。
(kei-ima3.blogspot.jp) 
 現在、地球温暖化の影響により南方系昆虫の土着地の北進が顕著であり、このままいくと新潟県でも数年後にはナガサキアゲハが見られるようになるにちがいない。
 だが、私たちは、美しいチョウを身近に見られようになることを喜んではいられない「容易ならぬ気候変動の時代」を生きていることを忘れてはならないと思っている。
 今年(2020)の11月18〜20日にかけて気温が異常に上昇し20日には℃27.1に達し、観測史上最高を記録した。20日に松美町の自宅のビワの木にツマグロヒョウモンがやってきてミツバチと共に吸蜜をしている姿が見られた。右下写真

(写真♀ 2005.10.27 大野)
※ビデオ資料−ツマグロヒョウモン−オス−
※ビデオ資料−ツマグロヒョウモン−メス−


    セイタカアワダチソウの花で吸密する姿 ♀

         市街地でみられた個体 ♂
写真 2020.9.27 松美町

写真 2020.10.7 松美町

            横からの姿−オス−

写真 2020.10.14 松美町

        ツマグロヒョウモン翅裏 ♂


写真 2020.10.2 松美町

       ツマグロヒョウモン翅裏 ♀


2006.6.29下石黒

写真2005.10.27大野

        柏崎市街地で見られた個体♀

写真2017.9 Mituko 豊町

      シキザキナデヒコの花で吸蜜するメス

写真2020.10.12松美町

        翅裏の模様の

写真 2023.10.6 松美町

    ニラの花の蜜を吸うツマグロヒョウモンの雌雄

写真 2020.9.20 松美町 春口敏栄


解 説
タテハチョウ科
 日本が分布の北限であり、日本では南西諸島、九州、四国、本州南西部で見られる。
 本州では1980年代まで近畿地方以西でしか見られなかったが、徐々に生息域が北上し1990年代以降は東海地方から関東地方南部、富山県・新潟県の平野部で観察されるようになった。
 2002年には関東地方北部でも目撃報告がある。2006年現在、関東地方北部でもほぼ定着し、普通種になりつつある。さらに2000年には、甲信越地方まで分布を広げている。
 はねの開帳約70o。オスは普通の豹紋であるがメスは前ばねの先端部が黒色を帯び中に白い帯がある。(上左写真)
 幼虫で越冬し最初は4、5月に発生して以後は連続的に3〜4回発生(多化性)し晩秋まで見られる。幼虫の食草はスミレ科の植物。
 ちなみに、メスは 有毒のチョウ「カバマダラ」 に擬態しているとされ、ヒラリヒラリと飛ぶ様子 まで似ていることは興味深い。
 名前の由来ははねの端(つま)が黒いことによる。



  水平に翅を開いた姿♀


写真2005.10.27大野

写真2020.10.2松美町

     吸密する姿
写真2005.10.27大野

     吸蜜する様子

写真2020.10.12松美町

柏崎市街地で見られた個体♀

写真2017.9 Mituko 豊町

柏崎市街地で見られた個体♀

写真 2020.10.2 松美町

柏崎市街地で見られた個体♂
写真2020.9.27 松美町

柏崎市街地で見られた個体♂
写真2020.9.27 松美町

    石にとまった横姿-メス

写真 2020.10.14 松美町

     翅裏―メス

  写真 2023.10.6 松美町

    メスに近寄るオス


写真2020.9.20松美町 春口敏栄

 2020.11.18に見られた個体
 写真2020.11.18松美町