タネ〔家の脇のため池〕 田辺雄司 タネの多くは、家を造るときの土壁を練った場所を利用してつくったものでした。 昔の家は、土壁によって寒暖を防ぎ、建物全体の強度が保たれたものでした。ですから、ある程度建物ができあがってくると近くの適当な場所を掘り起し土を大きなフルイにかけて、細かい土だけを土を掘った凹地で水と合わせて2、3人で良く踏みつけて粘りを出します。それに、2〜3pに切り刻んだ稲藁を入れて藁が均一に混ざるまで踏みつけて更に粘りをだしました。 その壁土を塗る前に、建造中の家の壁面の6尺の間、3尺の間にヨシを縦横2本ずつをコデナワ〔手でなった一番細い縄〕でヨシが動かないようにしっかりと巻き付け1辺が3pほどの真四角の窓ができるように組みます。〔写真参照〕
このコマイカキが終わると木ゴテで土壁を塗るのでしたが、この土壁塗りが終わった後の凹地に水を溜めたものがタネとなるのでした。→日常の暮らし-住 更に、広くしたり縁に石を並べたたりしてタネとしての形を整えました。また、水が入らないと水にアオミドロが湧くので、水を引いて常時少しずつでも水が入るようにしました。水を引けない家の中には隣の家の池の溢れ水を貰って引くこともありました。また、ツブ〔タニシ〕が棲むとアオミドロを食べて自然と水が澄むのでした。 タネは、昔の生活では様々な役に立ったものでした。例を挙げれば、昔は裸足のことが多かったので足洗い場となり、また、夏には午前中に汗で汚れた山ジャツやモモヒキをザブザブと洗って乾かして午後からそれを着て行ったものです。また、雑巾をすすいだり、大根やカブの泥を落としたり、その他洗い水としての用途も多くありました。 その他、防火用水や冬期間の雪消しにも役立ち、食用鯉の飼育場ともなりました。また、タネには様々な水生動物も棲み、子どもの遊び場ともなったものでした。 →子どもの暮らし |