木遣り師
(前文略)数ある木遣り師の中で、石黒マナコ(田辺甚重郎 ※上石黒屋号エエニャマの先祖)の高く通る音頭と采配だけが、この大物(けやきの献木)を動かし得たという。
 村の女衆が縫ってくれた黒と赤の袖無しに、モモヒキヌイゴはばき(脛巾)、わらじにスッペ、両手には真紅のサメツラこて(籠手)をはめた

綱張り唄
ヤーレー、ヤーレー
ヤーレー、ヤーレー
ヤー揃った、両手に綱持て
ヤー、エンヤラサー
ヤー、皆さんお願いだぜ


大物の進行
 切り倒した現場から出発点まで3日を要した。引き綱は太さ三寸(約10p)、そのほかにかけ綱控え綱、上り下りで人足の配分が難しい。道順を見通して雪を踏んでおく。
 ご本山の用材が通ると、お触れが村々に回っていて、炊きだしが用意される。大ビツを背負った行列がつづく。大物を引く若い母に、昼のお乳をふくませようと孫を負ぶった老婆が歩く。もはや見物人も心にしっかり引き綱を掴む。報尽のお念仏の中を大物は進んだ。

木遣り唄
ヤー綱はヨー、取れたたかヨー、ヤーンサ
囃子 ヤーンサ
やーや、御恩報謝の大物引きだヨー、ヤンサ
囃子 アリヤリャンリャンのコーイトセ
ヤー、若い衆方も女子衆も 
囃子
ヤー、年寄衆もお子ども衆も 
囃子
ヤー、力を合わせてご本山のためだよヨ
囃子
ヤー、この坂登れば六字の平だ、ヤーンサ

渡辺慶一著本山再建としられざる越後尾神嶽遭難記」より 
                        (資料提供−大橋トシオ)