民具補説 ザル 現在では、どこの家でも主に中型と小型のザルが使われていますが、昔は大型のザルや小型のざるが2個くらいは大抵の家にあったものでした。 大型のザルは主に味噌煮を行ったときに、煮た豆を長い柄杓で6〜7升ほどハンギリ桶の上に置いたざるに入れて煮汁を取り去るのでした。私の家では「豆あげザル」と呼んでいました。 その外、この大型ザルは夏の土用のころに、ゼンマイを缶から出してザルの中に広げて虫干しをして再び専用の缶に入れて密封しておくのでした。→参照・衣食住食。箕に入れて干す家もありましたが、大型ザルの方が風通しがよく細かなゴミも網目からおちるので適していだと思います。 中型のザルの用途は幅広くいろいろなことに使われました。畑の野菜を入れて洗う、天日に物を乾かすときの入れ物、茹でた蕎麦を入れて食事時に使う、茹でたサツマイモやカボチャの入れ物などとても重宝な用具でした。子どもの頃に茹でたサツマイモやカボチャを中型のザルに入れて火棚の上に上げてあり学校から帰るとそれを下ろして食べたことを思い出します。 小型のざるにはいろいろな形をしたものがありました。普通のざるの形をしたもの、丸くて深い形のザルには浅い物と深いものがありました。 小型のザルの使い道は、茹でた素麺(昔は高価な食品で普段は食べる事の出来ないものでした)を入れたり、味噌のすまし汁を作るときに味噌を煮た汁を入れた布袋をザルの上に置いて押して絞るのでした。また、濁酒を作ったときにザルで漉して飲むこともありました。「ザルごし酒」と呼んでいました。 ザルをネマガリダケを使って自分で作る人もいましたが、形よく、特に縁をきれいに編むことが難しいので買って使う人がほとんどでした。 毎年、春になり雪も解けて日が長くなる頃に遠くの村から箕やザルなどをたくさん背負った行商i人が村にやってきたことを憶えています。 文 田辺雄司 (居谷在住) |