民具補説
          背負いカゴ(しょいカゴ・まやカゴ)
 背負いカゴは、昔から農家には無くてはならない農具のひとつで、春から秋まで田んぼや畑の植え付けから収穫まで使用されていました。
 春は田の中に、刈り草を積んで作った堆肥や馬屋の敷き藁を積んでつくった堆肥を背負いカゴに入れて運びました。背負った堆肥を田に投入するときには、カゴを背負ったまま中腰で傾けてふるい落とすようにして落としました。子どもの頃、慣れないうちは堆肥が頭にかかってしまうこともあったことを憶えています。
 こうして一反(約10アール)あたり30回ほど背負い入れたものでした。
 その他、背負いカゴは、特に女衆がヤマ(作場)へ行くときには農具や弁当を入れたり、植え付けの時には堆肥をいれたりし使いました。また、帰りは収穫した作物などを入れて運ぶのでした。また、スイカやマクワウリをとって家に運ぶにも背負いカゴは重宝なものでした。
(今でも忘れられないのは、夏休みの頃になるとスイカやマクワウリを朝のうちに畑から背負いカゴにいっぱいになるほど取ってきて横穴に入れておいて食べるのでしたが、当時は大家族でしたからその日の内にほとんどを食べてしまったことです。)
 とくに秋の収穫時には白菜やキャベツを運ぶときには無くてはならない農具でした。せおいカゴに山盛りにして縄をかけて落ちないようにして運ぶと沢山の白菜やキャベツを効率よく運べたからです。
 こうして使っていると背負いカゴを覆っている網のコデナワ(アケビヅルで作ったものもあった)も切れて穴が開くことありましたがそのたびに修理して使っていました。
 背負いカゴ作りは冬のワラ仕事がすべて終わり、そろそろ山々の斜面の雪が無くなった頃におこないました。
 まず、山に出かけて用材となるオオキツネヤナギコナラの木、またはブナの木など(枝のない一本立ちの若木)を見つけて切ってきました。材料の木は粘りがありよくねじれる木が適していました。一つの背負いカゴを作るには5〜6本の木が必要でしたから2つ3つの背負いかごを作るとなると、素性のよいすらりとした木を見つけるのは容易な事ではありませんでした。
 切ってきた木はすぐに皮をむき、カゴの枠に結わく場所(下の図の矢印の場所)にあたる所を2、3回ねじっておくのでした。
 作り方は、おおよそ下記の通りです。

※コデナワの強靱さを増すために苧を交ぜることもおこなわれた。
               文・図 田辺雄司(居谷)