大鍋
 
 石黒では、大鍋は一村のうちの何軒かにあった。この鍋を使うにはそれ相当の竈(かまど)を必要としたからである。
 また、大鍋は主に豆腐作りに使われることが多かった。この鍋の上に適当な角材を2本渡してその上に石臼を据えて、一晩水に浸した豆を石臼で引いた。細かく砕かれた豆は鍋の中に流れ落ち自然とたまるので効率がよかった。終わったら石臼を取り除き竈に火を入れて煮てから布袋でこして、にがりを入れてかためるて豆腐を作った。村に豆腐屋のできる前にはこのようにして冠婚葬祭時には豆腐を作ったのであった。
 また、冠婚葬祭時、時には災害時などの炊き出しにも大鍋を使って飯を炊いた。古老にきくと、火災の時などには、各集落で炊き出しをして現地の自村の消防団に届け、石黒地区以外から駆け付けた消防団への炊き出しも大村(軒数の多い村)で引き受けてまかなったものであるという。
 その他、正月の餅つきにも大鍋が使われた。現在残っているセイロ(もち米を蒸かす用具)の大型のものは、この大鍋専用のものであろう。