ナ タ 
    突起付きのナタ
 
 鉈の刃の突起部分で石などに直接刃の部分が当たることを防ぐための造りのナタもあった。下石黒では使っている家は少なかった。筆者は、試しに使ってみたが慣れないせいか突起が邪魔になり使いにくいように感じた。



〇また、ナタを差して腰に巻き付けるケースのついたバンドのようなものも使われた。木で作った箱型のものや厚いズック製の袋型のものもあった。これを装着して、一年に1、2度は林を廻り木に絡みついたフジなどを取り除く作業を怠らなかった。したがっていたるところで高い成木の頂までフジが這い上り絢爛たる花を咲かせている今日の景観はまったく想像もできなかった。

  
 昔からナタは生活必需品の一つであり、どこの家にも1、2丁はあった。現在でも農村ではどこの家にある道具である。
長さは上の写真位のものが普通でありが、柄の長いものもある。重さは軽いと力が入らないので500gほどのものが普通であろう。
 用途は様々であるが、石黒では早春に焚き木用の低木を山腹で切る作業に使われた。低木は3〜4年のサイクルで切り取るのであったが、そのためには低木を根本から切り取ることが大切であった。そのためには、ナタの刃をこまめに研ぐとともに、ただ力任せにたたくのではなく木に刃を入れる角度に留意する必要があった。 
 また、スギの木の枝おろしにも使った。しかし、直径30cmを越えた成木の枝(大人の腕ほどの太さ)は非常に硬く、ナタで下ろすには熟練を要した。筆者はナタを使った枝おろしの技術は身に着けることはできなかった。枝のつけ根の下側に有効な切れ目を入れないと皮を引きはがしてしまうのであった。(2000年頃から、替え刃の手ごろな鋸が普及したのでそれを使った。)