民具補説
                コシミノ
 雪が消えると、田の土を三本鍬で「ジャボ、ジャボ」と打ち起こす田打ちが始まります。この作業が終わると水を張って、打ち起こした一鍬一鍬の土を細かく砕きます。これを「田こぎり」と呼んでいました。
 この作業は水を張って行うため下半身に泥水がかかるのでコシミノを着けたものでした。石黒ではこのコシミノを「前回し」とも呼んでいました。
 コシミノは、よく叩いたワラにヌイゴやヒョロロという30pほどの草(よく乾燥したもの)を混ぜて編みました。(下図参照)
 しかし、その後、このような田こぎりはだんだん行わないようになって、私の家にもコシミノはありましたが田こぎりに使うことは余りありませんでした。
     こしみの(ヒョロロ製)
 また、その頃、牛馬に引かせる「田こぎり万鍬」という道具が普及し私の家でも使いました。田こぎり万鍬は主に馬耕で田打ちをする家で使われたのでした。
 しかし、だんだん三本鍬を使って田打ちをする家でも田こぎりは省略してすぐに万鍬による田かきをするようになりました。
 田こぎりをして田かきをすれば作業ははかどりますが、田こぎをすればその作業に時間がかかります。結局、かかる手間は、どちらにしても同じであったのです。
 コシミノは、そのほか大雨の中での作業のときにはマワシミノを着ただけでは前が濡れるので、このコシミノを着けて田の水見回りや川の水量などを見に行く姿をよく見かけたものでした。

            田こぎり万鍬の略図

               コシミノのつくり

文・図 田辺雄司 (居谷在住)