民具補説
                     カナミ
 私の子どもの頃(昭和のはじめ)はカナミは非常に重宝がられ大事に使用されたものでした。
 当時はカナミはどこの家にもあるというものではなく、屋内のゴミなどは五升箕(ごしょうみ)というものに掃きとって棄てていました。五升箕は大きいのですが掃き込む先の部分が微かに湾曲しているため床とのすき間が出来るという短所がありました。それに比べるとカナミは先は平らで床にぴったりと密着したのでゴミがこぼれなかったのでした。

 カナミは石油缶を利用して作りました。
 (当時は居谷では石油ランプの生活でしたから石油を一斗缶で隣村から買ってきて、石油は危険だということで土蔵などにしまっておきました。そして、石油缶の上面2個所の角に釘で穴をあけて一升ビンの中に小出しにして使いました。更にそれを4合ビンの中に小出しにして石油ランプに注ぎ入れるのでした。)
 カナミの作り方は、四角の一斗缶を縦に半分に切り分けてその切り口に内側と外側からヤマダケ(ネマリダケ)の割ったものをあてて作りました。
 ヤマダケはなるべく太いものを探して切ってきてそれを上手に2つに割って半分にした一斗缶の切り口の1〜2pのところに穴をあけて針金をとおして竹に巻き強く締めて固定しました。こうすると切り口が隠れがたつくこともなくしっかりした取っ手ができあがりました。
 屋外で使ったときなど土がつくと錆びるのできれいに洗い落として立てかけておいて十年余も使うことが出来ました。作り方を図に書くと下のようになります。


                        文・図 田辺雄司(居谷)