民具補説 半 鐘 私たちの子どもの頃から他の集落には半鐘がありましたが、居谷にはありませんでした。隣部落に行くと高い塔の上に釣り鐘がぶら下がっているので、あれは何ですと聞いてみて、初めてそれは「半鐘」といって火事などのときにカンカンと打ち鳴らすのだということを知りました。
私たちの村では、半鐘ではなくホラ貝でした。それも昔から総本家の家の人が吹くのでした。火事などの災害が起きたときには総本家に走っていってその旨を話してホラ貝を吹いてもらったのでした。災害の時のホラ貝は音を短く切って「ボー、ボー、ボー」と鳴らすのでした。(※他の集落でも昔は災害時にはホラ貝で知らせたのとのことですが、2つのホラ貝を一緒に吹いたとの話も聞いています)その他、葬式の出棺を知らせる時や道普請、お講、総会などの合図にもホラ貝が使われました。 また、昭和30年代までは多くの家で密造酒を造っていましたが、それを摘発するために時々柏崎税務署(当時は酒税部と呼んでいました)がやって来ました。その時にはいち早く情報を知らせるのもホラ貝でした。 しかし、私たちの村のホラ貝による伝達も税務署に発覚して禁止されてコワリキがまわるようになりました。コワリキでまわる人は夜は灯りも持たず(税務署員に分からないように)に暗闇の中を走り回って知らせたので大変だったとのことです。 このように居谷では、戸数が少なく家が一個所にまとまっていたせいか、昔から火事や災害を知らせるときにはホラ貝が使われていたのでした。 文 田辺雄司(居谷) |