土ウス     
 土臼は、籾殻(もみがら)をとりのぞく作業に使われた。土臼は上臼と下臼に分かれていて、側面を竹製の網で巻いた物が一般である。昭和20年代に石黒では未だ使われていた。
 摺面は粘土と堅木の薄い歯で作り乾燥させたものである。上の漏斗(じょうご)状の臼に籾を入れて上臼を回転させると籾殻と米が分かれて上下臼の隙間から落下する仕組みである。上臼には箕一杯ほどはいったのでおよそ1斗ほどの籾が入ったものという。
 
また、石臼式の取っ手をつけて2〜3人で回すことも行われた〔下石黒〕。
 また、右上写真のような取っ手もあった。実際に作業を見たことはないが、こちらは取っ手の両端部分に縄を取り付けて天井からつり下げて2〜3人で回したものらしい〔居谷〕。 しかし、取っ手の運動は前後運動であるのでスムーズに回転させるためには籾投入者がちょっと手を加えてやることが必要であったであろう。
 土ウスで挽いた籾は集めてトウミにかけて籾殻と玄米を分けた。1日に玄米にして3〜4俵ほどひくことが出来たものだという。
 発動機による籾(もみ)すり機が普及するまでは、土ウスがどこの家でも使われた。石黒では昭和20(1945)代まで使われていたという。


 筆者は、土臼でのもみすり作業を見たことはない。
 生家にも土臼はあったが壊れた残骸のような姿で放置されていた。にもかかわらず子ども心に強烈な存在感をうったえる民具であった。それが昭和24・5年ごろであるから、その頃に石黒では発動機による籾摺り機がすでに使われていたというこになる。
 ちなみに、土臼が中国から伝来したのは元禄時代というから、土臼で挽いて、臼と杵で精米した時代は250年も続いたことになる。
〔解説指導 田辺雄司・大橋由勇〕

民具→土臼の取っ手
民具補説→ドウスとセンゴク・タテセン