民具補説 提灯のいろいろ 昔はどこの家にも提灯があり、用途により色々な種類がありました。普通、使用するのはブラ提灯や六角提灯で暗い夜道を歩く時に提灯を持った人が先を歩いて使いました。 弓張り提灯は、どういうわけか滅多に使われることなく座敷の鴨居の上などにかけてありました。子どもの頃の記憶では他の提灯に比べて暗い感じがしたことを憶えています。弓張り提灯は竹の弓で上下を引っ張り下に置くことができる提灯で家紋を入れたものが多く、もともと結婚式などの祝い事に使われて来たものと言われます。 その他、石黒では大雨の降る夜に使用したように記憶しています。六角提灯やブラ提灯とは異なり紙に油が塗ってあったように想います。未だ懐中電灯のない時代は雨風のとき田の水見などに、この弓張り提灯を持って早足で歩いている大人の姿を思い出します。 また、六角提灯は底が平らで広いのでどこにでも立てておくことができます。 茅葺き屋の屋根裏(おそら)の藁の中でドブロクをつくっている時など夜に六角提灯を持って取りに行きました。そしてカンナベに酒を入れて持って下りるときに提灯をつい忘れて下りることもあったようです。しばらくしてから気づいて取りに戻ったという話もよく聞きました。火災寸前であったという話もあり、屋根裏や土蔵に行くときには必ず2人(1人は提灯持ち)で行くのでした。子どもの頃によく「提灯持ちにお前も来い」などと言われ屋根裏や土蔵に提灯を持って行ったことを憶えています。 遠い夜道にはブラ提灯か弓張り提灯が主に使われたようでした。 その他、六角提灯は葬式のときには必ずと言っていいほど持って行きました。また、葬式の時には四角提灯を道案内火として使用しました。これは、葬式時に作り、火葬場で焼いてしまう習慣でした。 昭和の初め頃は、ロウソクも和ロウが主で火をつけますと黒い煙が沢山まいあがるので仏壇の中がススで黒ずんでしまうのでした。子どものころ、時々、その和ロウをスキーに塗って見ましたが少しも走りませんでした。そのうち、パラフィンロウソクが出回りましたが、こちらはススが出ないロウソクでした。これをスキーに塗ると大変よく滑ったものでした。 |
提灯のいろいろ 文・図 田辺雄司(居谷) |