丑暮より二年季売渡し申す稗田の事 (山中村文書)  
   









○稗




稗田



夫喰米


代銭


構い


脇より


何角と


相済まし


埒明け


体悪しく→この部分難読→健康害すの意味か。


請け人


同断


枝の内→枝村を指すものであろう
 
    丑暮より二年季に売渡申す稗田の事
  一稗田 六畝 名所 かえば
   此の代銭 五百八十文
 右は当丑春中 夫喰米に行き詰まり申し候に付き拙者
 所持稗田 かくのごとく二年季に売渡代銭 慥かに受取
 申す処□御座なく候 この稗田に付き何方より構い少しも
 御座なく候 若し脇より何角と申すものこれ在り候はば拙者
 何方よりも罷り出で急度申し訳仕るべく候 相定めの通り
 年季明け寅暮 右の御銭相済まし申し上げ候はば稗田
 御返し下さるべく候 若しその節 代銭埒明け申さず候わば以来迄
 貴殿御支配になさるべく候 体悪しく成らず共 売渡申し
 申す上は重ねて少しも申し分御座なく候 後日の為 稗田
 売渡証文依ってくだんのごとし
              山中村稗田売主
  享保十八年            八左衛門
   丑三月         請け人 忠兵衛
               同断  重二郎
     枝の内
      四郎治殿
 
                     
       追補→ 稗田の稗(ヒエ)について
原産地は東アジアとインドの原産地が考えられるが東南アジアの稗は日本で栽培化されて朝鮮半島から中国に伝わったものと考えられている。日本の稗は粟とともに稲作の渡来以前からすでに栽培されていたものと見られている。
 稗の特性は
①生育期間が短い事。
②低温・湿地・旱魃や酸性土壌・塩害などに強い事。
③肥料がをそれほど与えなくとも収穫が期待できること。
④長期の貯蔵が可能であること。
⑤タンパク質や脂肪分などが多く栄養価が高く消化がよいこと。
など長所が多いが味の劣ることが難点とされる。
 稗の栽培は古代・中世の文献からも確認でき、近世の「農業全書」では稗は最も下等な穀物であるが貧民を救い農家に利益をもたらす植物とされている。また、現存する享保・元文の文書によれば陸奥盛岡藩では94種、美濃国では110種の品種が確認されているといわれている。
(参考文献-国士大辞典)
 

     
読み下し・用語手引き文責 大橋寿一郎