相定め申す家売り渡し証文の事
 言葉の手引
   












































差し詰まり



文化5年


五人組頭



 

     相定め申し家売渡証文の事
 一 元金 二両一歩(分)二朱三百二十四文也
     此の書入れ家一軒
 右はこの度私義当辰の御年貢金に差し詰まり
 書面の通り家一軒質入れ仕り御年貢上納仕り候處
 相違御座なく候 右に付き来る巳三月雪消え次第に
 私共立会い明け渡し申すべく候 その節違背申すまじく候
 後日の為請け印形証文依ってくだんのごとし
          山中村
  文化五年辰十二月   家売り人主 □□□□(伏字)
             請け人   三左衛門
             同断    与二右衛門
             同断    惣次郎
             五人組頭  甚七
     庄屋
       常左衛門殿 
 
  ○ 感  想
 本文書の出された翌年の文化6年に、山中村は困窮のために「
夫喰米拝借願」を提出している。
 なお、本書表題は家売渡証文とあり、文面には「家一軒質入仕」とある。住居の建物を質に入れるからには余ほどの困窮であったに相違ない。おそらく、田畑はすでに質流れとなり失っていたのであろう。
 家を質入れはしたが、居住している家を真冬の12月に渡すことは出来ないので、
「雪消えを待って請け人等立会のもとに明け渡す」との記載がある。
 明け渡したのちは、掘っ立て小屋に住むのであろうか、最悪の場合は欠け落ちも懸念される。
 しかし、長い歴史をもった共同体である村であり、その後、何らかの救済の手立てが講じられたものと信じたい。
 ちなみに売渡金額については、当時の家は狭く、土間に藁クズを敷き詰めムシロを敷いた粗末な家も珍しくもないこと、また、転売等の商品価値も低いことからみて、元金2両1分余の金額は、あながち納得のいかないほど少額の代金ではないと思う。

 
 読み下し・用語の手引・感想文責-大橋寿一郎