民具補説
                   板ゾリ
 早春の未だ雪の多い頃に、自分の家の林に出かけて板ゾリを作るにちょうどよい枝を数本選んで鋸で切って来るのでした。3mも残雪がある頃なので杉の高い枝に手が届くのでした。でも、当時、子どもの使ってよい鋸は大抵切れ味がわるく手間をかけてやっと切り取るのでした。
 それを家に持って帰ると皮をむくのですが、その頃には木もそろそろ水を吸い上げるころなので簡単にむけるのでした。
 皮をむいた数本の木の中からちょうど曲がり方が同じようなものを選んで、腰をついて滑るにちょうどよい長さに切断します。そして2本を平行に並べた上に、厚さ6分(約2p)の板を置いて釘で打ち付けました。(4分板では割れてしまう懼れがありました)
 でもその頃は、板も釘も子どもが自由勝手に使える時代ではないので親の目を盗んでの作業でした。
 そして、春3月ともなりますと毎朝のように雪の表面は氷って固くなりますので子どもが走っても跳び上がってももぐらない朝が続きます。昔は大雪で残雪も多く村の周りにはソリに乗って遊ぶに適した場所がたくさんありました。大勢子どもが、木ぞりやワラゾリ(主に女子)をひいて集まり、斜面を滑っておりるとソリをひいて元の場所まで上って滑ることを繰り返して楽しみました。
 また、スギの木のない家やちょうどよい枝のない場合は一辺が3pほど角材を見つけて先端を斜めに切り取ってそこに山竹を切ってきて2つに割って打ち付けるのでした。こうして作ったソリはすごくよく滑るので杉の枝で作った子もソリにもヤマダケを打ち付けてお互いに速さを競うのでした。
 私たちはソリ遊びに夢中になり時間のたつのも忘れて遊んでいると、学校の先生がカンカンに怒ってやってくるのでしたが、あまり面白そうなので「どれ、おれにも乗らせろ」と言って私たちのソリに乗って両足をあげて滑るのでした。そうしてしばらく遊んでから先生と一緒に学校に行って勉強を始めたこともありました。そのほか山竹だけでつくったスケートに乗って遊んだこともありました。
 80歳を過ぎた今でも、ヤブ(雪原)が凍みるころになると遠いその頃の楽しかったソリ遊びを懐かしく思い出します。
木ゾリの作り方
竹スケートの作り方

        文・図  田辺雄司(居谷在住)