ハマゴウ
暮らしとの関わり
 柏崎市街地の裏海岸のハマゴウは、砂浜の減少とともに30年ほど前に比べて著しく減少した。現在柏崎海岸で最も多く見られるところは松波〜荒浜海岸であろう。〔本文記載2012年〕
 現在では、ハマゴウは新潟県の準絶滅危惧種のひとつに指定されている。
 ハマゴウは、海浜植物の代表的存在である。筆者は、中学生のころに海水浴時に見た砂に埋もれたような状態のハマゴウは草本だと思いこみ、その後長い間そう信じていた。同時に、群生のなかに横たわる枯れ木のような幹は別個の細い流木である思いこみ関心も持たなかった。
 今にして、よく観察してみるに、太い幹でしっかりと砂浜に根を下ろし、強い海風に飛ばされることなく生きていくには真に適応した姿であることが分かる。
 花期は7〜9月といわれているが花期は長く10月いっぱいは花が見られる。
 また、昨日(2012.7.17)、西山町の大崎海岸で見た限りでは地下茎(幹)は海と反対側の方に向かって伸びているものが多かった。中には道路に歩道の上を這っている。海風と反対の方向へ伸びるのか、南側へ伸びるのか、興味あるところだが、こうして、強風の当たるところから脱出したハマゴウは1mほどの高さに直立した低木の姿を見せることもある。ちなみに、市街地の浦浜の公園の縁には立派な立木の姿のハマゴウが見られる。→参考画像
 しばしば砂が風で持ち去られて地中の幹があたかも、流れ着いた枯れ木のように横たわっている姿を目にする。→参考写真
ハマゴウは、コルク質で包まれた種子(右下写真)は海流に乗って東南アジアを経て遠くオーストラリアまで達して分布を広げているといわれる。
 また、果実を10月頃に採取して陰干しにしたものは生薬となり「まんけいし」と呼ばれるとのこと。
 荒浜海岸ではアメリカネナシカズラの寄生により葉が枯死している個体が所々でみられた。アメリカネナシカズラは今後、増える傾向にあるが、その被害の実態について少し詳しく観察をしてみたいと思っている。→参考画像 
 今朝(2012.9.2)荒浜海岸に行く途中、砂浜に放置されたボートの脇にハマゴウが繁茂していた。なんとなく、写真家の題材になりそうな光景であったので撮影してみた。→写真
 今日(2012.11.27)採取しておいた種子の観察と撮影をしたが、乾燥した葉であったが確かにほのかに芳香がある。
 実物顕微鏡で見ると、種子はコルク質の厚い皮に包まれていて海流による長旅に耐えるような構造になっていることがよく分かった。右下写真
 昨日(2013.9.20)米山小学校の海浜植物観察園「潮風フラワーヒル」を見学した。遅咲きの花が点々とみられるハマゴウの虫えいに初めて出会った。「ハマゴウハフクレフシ」と呼ばれフシダニによって作られるもので中央の部分が突出し、直径は3〜4ミリくらい。虫えいの世界はミクロの世界であり未だ解明されないことが多い。今後調べてみたいテーマの一つだ。(左下写真) 

写真2012.7.17 大崎〕


                群生

写真2012.7.17 大崎海岸

 写真2012.8.23 松波海岸 
    
写真2012.9.10 荒浜海岸

写真2012.9.29 荒浜海岸 背景-米山 

              冬のハマゴウ

写真2012.11.22 荒浜海岸

         地中を這ってのびるハマゴウ

写真2012.8.4裏浜

写真2012.8.29荒浜海岸

      別個の枯れ木のように見えた這う太い茎

写真2012.7.17 大崎


               花期

写真2012.7.17 大崎

  二股に分かれる雌しべの先端

写真2012.7.17 大崎

         葉裏を覆う毛

  写真2011.6.4 荒浜海岸

              真冬のハマゴウ

写真2014.1.29荒浜海岸

解 説
クマツヅラ科
 東北地方南部から沖縄までの海岸〔琵琶湖を含む〕の日当たりの良い場所に(波による砂の動きが少ない所)生える落葉低木
 幹は砂中を這い枝が地上部に斜めに立ち上がり葉をつけ高さ30〜60pほど。
 葉は対生(下写真)楕円形または倒卵形で長さ2〜5p、幅1.5〜3pで全縁。両面に微細毛が密生している(左下写真)ため白色を帯び、特に裏面は白くみえる(上写真)。
 花期は7〜9月。枝先に円錐花序となって紫色の唇形花を多数つける。ガクは鐘形で5個の鋸歯がある。花の長さは13oほどで上唇は小さく、浅く2裂し、下唇は大きく3裂している。また、下唇の中央の裂片は両側の2片に比べて長く、上面に毛がある〔下写真〕。雄しべ4個、雌しべ1個で雌しべ先端は二股に分かれている〔左下写真〕
 果実は球形で径5〜7o。コルク質で下半部にガクがついている〔下写真〕。熟すにつれて緑色〜紅褐色〜黒色と変わる。中の種子は4個。
 名前の由来は、枝葉や花のもつ芳香から「浜香」の名がついたとの説や「浜這う」が転じたものなどの説がある。



        冬芽
写真2015.1.24裏海岸

        芽吹き
写真2013.4.16 荒浜海岸

        若芽
写真2013.6.16 荒浜海岸

      四角の茎

写真2012.7.17 大崎

      対生する葉

写真2012.8.31 荒浜

      花から実へ


写真2012.8.23 松波海岸

       果実期

写真2014.8.27柏崎海岸

     四稜がある枝写真2011.10.21 裏浜

    果実の中と種子


 コルク質に包まれた種子

 撮影2012.11.27

 砂中の茎(幹)から出る枝
写真2012.8.23 松波海岸

  葉を落とした冬のハマゴウ
写真2012.12.17 松波海岸

 ハマゴウの葉の虫えい

 写真2013.9.20米山小 観察園
  真冬まで残っていた果実
写真2014.1.29 荒浜海岸