タチアオイ(花壇の植物)
 暮らしとの関わり
 タチアオイは、子どもの頃から親しんだ花の一つだ。今のように様々な色の花はなかったが、何種類かはあった。
 筆者の家の庭にあったのは黒ずんだ赤の花であった。それと、もう少し明るい赤もあったが、いずれも見栄えのしない花であった。
 僕らは、よく、友達とこの花びらをむしり取って花弁のつけ根から二枚にはがして鼻の頭に張り付た。3枚くらいは付けることが出来た。御蔭て、筆者は70年前の、あのタチアオイの花独特の香りを嗅覚に感じるほどに思いだすことができる。
 ところで、どう考えても、開花の時期は現在よりも少し遅かったように思うがどうであろう。7月の初めの頃だ思うのだが・・・。なぜ開花期に、こだわるかと言えば、僕らは、タチアオイの花が咲くと、いよいよ夏休みの月がやってきたなと感じたからだ。
 とはいえ、当時の子どもには、夏休みは楽しい事ばかりではなく炎天下、畔草取りや畑の草取りの辛い仕事が待っていた。それでも、やっぱり夏休みは待ち遠しかった。
 ちなみに、石黒では「アオイの花が庭に増えると家が絶える」という俗信があった。昭和28年ごろであったか友達のK君の家が離村した年の夏、彼の家の庭には驚くほど沢山のタチアオイが咲いたことを憶えている。
 その後10年ほどたった昭和40年(1965)頃から故郷石黒は過疎化による離村の家がぽつぽつと現れ始めたのであった。

写真2007.7.12 上石黒


       家の脇に植えられたタチアオイ

写真 2010.6.30 寄合

        現在では様々な色の花がある

写真2018.6.24長浜町

             炎天下の白花

写真2018.7.16 松美町


解 説
アオイ科
 中国原産で日本には 薬用として渡来したといわれている。その後園芸種に改良され現在では花壇に植えられている。
 本来は宿根多年草
 茎は直立し高さは2m以上に達する。
 葉には長い柄があり互生し円形で基部は心臓形。5個〜7個に浅く切れ込み縁には鋸歯がある。
 花期は6月〜8月。葉のつけ根に短い柄のある大型の花をつけ、下から徐々に咲きあがる。そして先端の部分は長い花序となる。ガクは五つに裂けて花弁は5個あり。つぼみのうちはらせん状に巻いている。色は、赤、ピンク、黄色、白などがある。また、八重咲もある。
 アオイ(葵)ということ言葉にちなみ静岡市と会津若松市の市の花とのこと。
 名前の由来は茎が直立することによる。



       全体の姿

写真 2010.6.30 寄合

       白色の花

写真2018.6.24長浜町
     らせん状のツボミ
写真2018.6.24長浜町

       八重咲
写真2018.6.24長浜町