スズメノカタビラ | |
暮らしとの関わり 石黒では普通にみられ、雑草の代表と呼びたい植物である。春のみならず晩秋から初冬にかけてもよく見受けられる。暖冬で降雪の遅い年などは1月に畑や庭に繁茂する。→下写真 筆者が、子どもの頃に祖母からよく聞いた話であるが、石黒で、明治の初期と想われるが小正月(当時は月遅れで2月14〜16日)に日よけの山笠をかぶって畑の草取りをしたことがあったという。 毎年、丈余の雪に村全体が埋もれてしまうような豪雪地帯の石黒にあっては、まことに信じがたいような経験談であった。 ちなみにその年は2月下旬から降雪が続き平年以上の積雪となったという。 おそらく、この時に畑に生えていた草はスズメノカタビラであったでのではないかと想う。 2011.12.1の新潟日報に長岡市寺泊夏戸のトキ分散飼育センターでトキが巣作りに使うスズメノカタビラを採取しているとの記事が掲載されている。スズメノカタビラを根をつけたまま洗って乾燥させたものを3月に入ると飼育ケージ内に撒いて置いて巣材として使わせるとのことである。 昔、全国にトキが生息していた頃には、石黒のような多雪地では冬季は暖地へ移動したにちがいない。営巣期の2月は、トキはそこで農家の人達が畑や庭で取った雑草が枯れたものを巣材に使ったのではなかろうか。冬の畑や庭の代表的な雑草といえばスズメノカタビラであったであろうから巣材として使う習性が生まれたとも考えられる。 写真2011.3.9 田塚 丈の短い冬季のスズメノカタビラ 写真2011.12.1下石黒 初冬の群生 写真2011.12.15下石黒 |
解 説 イネ科 日本各地に生える1〜2年草。秋に発芽して緑の葉のまま冬を越して春早く穂を出して早いものは2月に開花する。 茎は叢生して下部が節で曲がっている。高さ10〜25p。 葉は線形で長さ2〜8p、幅2〜4oほど。先端は急に鈍化して微かに凸凹が見られる(左下写真)。底部も急に鈍形となり葉鞘となる。 花期は3〜11月。円錐花序を茎の先につける。花は、白緑色で長さ3〜8p。小穂は楕円形で3〜5o、5個内外からなる(上写真)。 第一包頴は大体膜質で細長く一脈がある。第2包穎は少し大形で卵状楕円形で3脈がある。護穎は幅広い楕円形で明瞭な中脈があり先端は広く尖り、縁は膜質の無色。雄しべは3個ある。 名前の由来は、小さい穂を付けた花序を雀に着せた単衣(ひとえ)の着物に見立てたものであろう。 鈍頭の葉 写真2011.3.9 田塚 |