サンカヨウ
暮らしとの関わり
 石黒では、黒姫山沿いなど限られたところでしか見られない。
 方言名は伝わっていない(聞き取り中)が、昔から村人に知られている植物である。花のつき方や葉の様子が一風変っていて純白で清楚な花が印象的である。
 昭和50年代初めに、黒姫山の鵜川側の沢沿いに大きな群生地があった。小学生の息子と残雪の地蔵峠越えをした折り、花盛りのサンカヨウの群生地の真ん中に陣取って、近くに生えているウドを具に味噌汁をつくって朝飯を食べた思い出がある。その時に登山道の真ん中まで小さな実生が生えていた。その小苗を持ち帰って生家の庭に植えたものが今も毎年、花を開き楽しませてくれている。現在の息子の年齢から計算するとおよそ40年前に移植したことになる。
 以来、毎年のように峠越えを続けたが、その後は急速に個体数が減少し群落は姿を消した。山野草ブームによる盗掘もさることながら、あれだけ密生すると消滅に向かうのが自然の理というものであろう。
 以来、20年余にわたり峠越えの度にその場所を観察しているが、ここ数年、個体数は少しずつ増えているように思われる(1996)。この状態で増えていくなら、もしや筆者の孫が当時の息子の歳になる7年後には、かつての規模の群生地に復活するかも、などと、この記事を書きながら、とりとめなく愉しい空想にふけっている。
 サンカヨウの花は散り際に花弁が透明になるのも印象的だ。また、ブルーベリーに似た果実も美しい。
 果実は食べられるとのことだが、食べられる草木の果実は何でも食べた筆者の少年時代に食べた記憶がないことは、子どもの生活圏には自生していなかったのであろう。
 参考画像−つぼみ〜果実まで

(写真上・右上2005.5.30板畑 右下2005.6.25板畑)

               発芽の頃−1

写真 2020.4.12 下石黒 (記録的な小雪)

写真 2020.4.12 下石黒

      サンカヨウの若草

写真2007.5.8板畑

         上部の葉と下部の葉と花

写真2005.5.30板畑

    散り際の透明感のある花弁

写真2009.4.27板畑(小雪)

               葉裏の毛

写真2005.5.30板畑

  庭のサンカヨウ(40年余以前に実生を移植したもの)

 写真 2022.5.17 下石黒

解 説
メギ科
 広島以北の本州の日本海側と北海道の山地の湿った木陰に生える多年草
 根茎は太く横に這い凹状の古い茎部がつらなり下にヒゲ根を出す。
 茎は1株1本で直立する。高さ30〜50p。
 葉は茎に二枚つき下部の葉は長い柄を持ち中央に深い裂け目があり縁には大小の鋸歯がある。〔左下写真〕上部の葉は柄がなく葉の基部に蕾をつける〔左下写真〕。そこから花茎を伸ばし3〜10個ほどの花をつける〔左下写真〕葉全体に短毛があり特に葉裏の脈に多い。
 花は白色で、花弁、萼片
(がくへん)とも6個。萼片は
早く落ちる。花弁の長さは1p。雄しべ6個、やく(おしべの一部で中に花粉が入っているふくろ)は弁によって開閉する。子房は1個で短い〔左写真〕
 果実は液果で黒い藍
(あい)色で葡萄のように白い粉をかけた感じで中に数個の種子を宿す〔上写真〕

 名前の由来は漢名の「山荷葉」に基づいたものといわれるが漢名の山荷葉は本種を指すものではないと牧野植物図鑑にある。



    発芽の頃−2
写真 2020.4.12 下石黒

      つぼみの頃
 写真2007.5.8板畑

      開花へ


  雄しべと花柱

2009.4.13板畑(小雪で早い開花)

     果実期の初め
写真2013.5.28板畑

     サンカヨウの若い実

写真2007.5.31板畑

     サンカヨウ種子


写真2007.6.24板畑