ヌカボ
 ヌカボは、ごく目だたない草で最も人に名前を知られない草の一つであろう。とくに葉も茎も細いためにいっそう人の目を引くこと少ない。
 しかし、空き地などで
群生していると思わず近づいて見たくなるが、その形体を観察するにはルーペが必要なほどである。
 先日(2014.5.20)に藤井の広い空き地が白く波立つような光景に出合い近づいてみた。するとこのヌカボの大群生であつた。
 1ヘクタールほどの空き地のほとんどを独占していたヌカボが強い風になびく様子が水面が波立つように見え、また土埃が低く舞い上がるようにも見えた。
 興味を感じて群生地の真ん中に立って眺めていると、真に不思議な光景であった。自分は、ヌカボの姿を見ているようでもあり風の姿を見ているようでもあり、その両者を同時に眺めているようでもあった。
 ふと、「疾風、勁草を知る」という我が従兄の座右の銘を思い出した。
 そして、この一見、か細く弱々しげな草は、他のイネ科の草には決して負けない強さを持つ勁草の一つであろうと思った。
ビデオ資料→風に波立つヌカボ

写真2014.5.20藤井



写真2014.5.20藤井




解 説
イネ科
 道端や空き地などに生える二年草。高さ20〜40pほどで叢生し直立して緑色。茎は分枝しない。
 葉は2〜5mmの狭い線形で次第にとがる。
 花期は5〜6月。茎の先に円錐花穂をつける。
 小穂は1花からなり長さ1mm余りで緑色。2包頴はほぼ同形同大で先端は鋭く尖り、護頴とともにノギはもたない。
 雄しべは3個、子房に2個の花柱がある。頴果は極めて小さい。
 名前の由来は花穂が小糠のように小さな事による。



          草姿
写真2014.5.20藤井