ミヤマカタバミ
暮らしとの関わり
 ミヤマカタバミを初めて見たときには、その大型で純白の花に思わず見とれたものだった。 
 ミヤマカタバミは、石黒では板畑にしか確認していない。ほかの場所ではおそらく自生していないのだろう。
(※2009年6月に政栄さんが、新たに上石黒で径4mほどの大きさの群生を一カ所発見した−参考写真
 ミヤマカタバミは根茎で増える様子は見られない。前年の葉の付け根が鎖のような形で残っている。
 もっぱら種子による繁殖に頼るものであろうか。もしそうであるとすると(アリ散布植物の可能性もあるが-下記参照)、果実が熟して種が弾き飛んでもせいぜい30cmほどだ。100年かけても30mということになる。板畑から下石黒まで3kmとするとざっと1万年かかることになる。まさに気の遠くなるような話である。
 1980年代に市内の水上集落のはずれの小川沿いにミヤマカタバミが点々と生えているのを見たことがある。
 このような場所では流水によって運ばれることも考えられる。
 それにしても石黒ではに2カ所以外にはまったく出会わないこと、2カ所の群生の周囲にも個体が全然見あたらないことから、もっぱら種子の自力散布に頼る植物であるように思われる。(アリ散布であればもっと広範囲に繁殖が見られると想われるが・・・)
 花が終わってからもよく閉鎖花をだして結実している様子が見られるが、これも自力の種子散布を少しでも有効にするために与えられた天性とも考えらる。
 いずれにしても繁殖力の強くない植物であることは確かであろう。
 ※ちなみに、ミヤマカタバミの種子を拡大して見るとエライオソームらしき付着物が見られる。(左下写真) しかし、ミヤマカタバミをアリ散布植物と明記した文献に私は出会ったことはない。とはいえ、同種のカタバミはアリ散布植物とされるのでミヤマカタバミもアリに依る種子散布をする植物であるのかもしれない。
 ともあれ、こうして故郷の植物について色々調べて知る過程が私には楽しいことなのだ。

資料→本サイトのアリり散布植物一覧

写真2005.5.14板畑


ミヤマカタバミの若芽
2005.5.14板畑
雄しべと花柱
小葉の裏表

2010.5.23上石黒 政栄
        
               花期

写真2015.5.16板畑

         花柄の包

2005.5.14板畑

            葉の微毛

2005.5.14板畑

       閉鎖花と種子の拡大写真

2007.7.14上石黒

       初冬の頃の葉の様子

写真2015.11.26下石黒


解 説
カタバミ科
 東北地方南部から四国まで分布する多年草
 落葉広葉樹林やスギ植林地などの林床に自生する。
 根茎は、葉柄の基部多数残って鎖状をなし〔下写真〕そこから根が出る〔左下写真〕
 茎はなく葉は根茎につき長い葉柄を出し小葉を三枚つける。小葉はハート形で開花の頃には長さ12o、その後20oに達する。葉にも柄にも微かな毛がある〔上写真〕
 花も葉の展開と同時に3〜5月に開く。花は7pほどの花茎の先に1個つき、ガク片、花弁ともに5個。雄しべは長短あって10個(右上下写真)、雌しべは1本で子房には根元から5個に分かれた花柱がある。花弁は白色で紫の筋の入ることもある。花の径3〜4p。花柄の上方にがある〔左下写真〕
 さく果は長さ2pほとの細長い卵形で中に小さな種子が数個入っている。 
 熟すると中の種子をはじき出す。花が終わってからも閉鎖花を出しよく結実する(下写真)
 名前の由来は深山に生えるカタバミの意味。
  


       葉と根

2009.6.13上石黒 政栄

    根茎の拡大写真

2010.5.23上石黒 政栄

露出する根茎(真上から見たもの)
2009.4.19上石黒

 ブナの枯葉の下から開花

 2020.4.12上石黒記録的小雪

     花後の様子

2010.5.13上石黒

  食草とする昆虫〔名前?〕

2005.5.14板畑

       閉鎖花

2007.7.14上石黒 

    冬のミヤマカタバミ
写真 2013.12.1 上石黒