コウゾリナ
暮らしとの関わり
 石黒では方言の呼び名は伝わっていない。
 飼いウサギのエサとなる草を毎日採ることが子どもの仕事であったが、コウゾリナを採った記憶はない。おそらくウサギが好まなかったのであろう。あるいは、トゲ状の剛毛がある茎や葉が子どもの手に余ったのであろうか。
 いずれにしても、昔は、今ほど多く自生していなかったことは確かな事である。
 筆者の推測にすぎないが、除草剤が使われだした昭和中期から、抵抗力の強いコウゾリナが田や農道の脇などに徐々に勢力圏を広げてきたのではなかろうか。
 それにしても、コウゾリナは、花もそれなりに美しいのに人気のないのは、全体に生えた棘のような剛毛のせいばかりであろうか。筆者には、どこかこの草は、人を引き付ける愛嬌のようなものに欠けるようには思われる。
 コウゾリナは、万葉集など歌集や文芸等にも登場しない植物であるそうだ。
 しかし、若芽は、昔からヨーロッパではハーブとして食用となり、根もコーヒーの代用に使われたそうだ。
 現在〔2013〕では、石黒で花の時期には所々で大きな群生が見られる。〔下写真〕
 来春は、是非、先入観を捨てて、手を差し伸べ、目を近づけて親しく観察してみたいと思う。

(写真上・右上中2005.6.18大野 右下2005.6.28板畑)


           コウゾリナ全体の姿

撮影2009.6.9上石黒

               花

撮影2009.5.8寄合

           コウゾリナの群生

写真2007.6.10 大野

          コウゾリナの花と種子

写真2005.6.20 板畑


  単独に生えて多く分枝を広げるコウゾリナも稀に見られる

写真2011.6.17寄合

   一面に種子をつけたコウゾリナ

撮影2009.6.25上石黒

      そう果と冠毛   

撮影2009.6.25上石黒

解 説
キク科
 全国の山野に多く見られる多年草ロゼット状で冬を越す。全体に褐色の剛毛が生えていてざらつく
〔下写真〕
 茎は円柱形で直立し多少分枝し高さ40〜100p。
(左写真)   葉の長さは6〜15p、幅1〜4p。下部の葉は根葉と同じ倒皮針形で長さ8〜22p。上部の葉は互生し小形で皮針形となり半ば茎を抱き〔下写真〕長さ6〜12p。縁にはやや不整の鋸歯がある。
 花期は5〜10月。茎の上部の葉のつけ根から枝を出して黄色の花をつける。花は、ゆるい散房花序の形で
〔左写真2〜2.5p。花床は平たく短毛がある。
 総包は緑色でいくらか黒味があり長さ約1p。総苞の外片は長さが短く斜めに開出する。総苞の内片は背に1〜2oの剛毛がある。
〔下写真〕小花は30〜34個ある。
 果実〔そう果〕は冠毛をもち風によって散布される。
(左下写真)
 名前の由来は、茎や葉の感触からカミソリ〔こうぞり〕を連想して「剃刀菜」と呼んだことによる。



   ロゼット状のコウゾリナ

写真2008.10.28 下石黒

        幼苗
写真2009.4.24 下石黒 小雪

  コウゾリナの茎と上部の葉

撮影2009.6.9上石黒

   コウゾリナの茎断面

撮影2009.6.9上石黒

   葉の剛毛と不整鋸歯

撮影2009.6.9上石黒

        総 包

撮影2006.5.22 大野

      花序の横姿
写真2005.6.20 板畑