コウボウムギ

暮らしとの関わり
 コウボウムギという名前は、一見、その小穂の形からコウボウシバの方がふさわしいように思われる。
 石黒の山育ちの筆者にとっては海浜植物はどれも、珍しく思われるが、海岸の砂浜で半分砂に埋没しているように生えているコウボウムギの姿も異様に見える。子どもの頃〔1955〜1960〕に鯨波海岸に学校で海水浴に来たときに初めて出会った時のことがおぼろげによみがえる。腰を下ろした傍らにあったことと砂に埋もれた個体の葉が肌に触れたこにより葉の堅さや鋭い鋸歯が印象に残ったせいかもしれない。ちなみに海水浴で印象に残っているもう一つの植物はオニヤブソテツであるる
 ところで、先の3回の撮影時に実生の写真を撮ろうと探したが全然出会うことはできなかった。おそらくあのたくましい根で増えていくのであろう。しかし、果胞に包まれた種子は意外に大きく立派である。今後採取してきて発芽をさせてみたいものだ。

写真2012.7.2 鯖石川河口


              早春の芽
写真2013.3.27 松波海岸

                雌株

写真2012.7.2 鯖石川河口
               雄株
写真2015.5.21 鯖石川河口

           全体の姿と大きさ

写真2012.7.2 鯖石川河口

          小穂と鱗片と果胞〔内写真〕

写真2012.7.2 鯖石川河口

          果実期−ウンランと共に
写真2012.8.26 松波海岸 〔背景は米山〕

               群生
写真2012.8.23 番神
解 説
カヤツリグサ科
 北海道から沖縄まで海岸砂浜に生える多年草雌雄異株〔希に両性〕〔写真左上雄株、下写真雌株〕。普通、雌雄異株であるが希に両性の小穂をつける
 根茎は太く長くのび木質化している。茎は太く10〜20pほど。多くは砂に埋まって上部や葉が砂上に出ている。
 葉は強靱で湾曲し広線形、長さは20〜30pで幅は4〜6o。縁には鋭い鋸歯がある〔下写真〕
 花期は4〜6月。前年の株の脇に茎が出て先端に1個の長さ4〜6pの小穂をつける。雄小穂はで覆われて褐色。雌穂は黄緑で小花の先は鋭く尖る。雌花鱗片は狭卵形で広い皮質の縁〔右下写真〕をもち背面は多脈で幅広いとなって伸びる。
 果胞は鱗片と同じ長さかやや短く長さは約10o。背面は丸く多脈があり先は芒状に尖る。果実は平たく3がある。
 名前の由来はその実が麦に似ていることによる。別名筆草は根茎の節に古い鞘の繊維が筆の先の穂のように残ることに因る。



    長くのびる根茎

写真2012.7.2 鯖石川河口

   葉の縁の鋭い鋸歯

写真2012.7.2 鯖石川河口

        種子
写真2012.8.23 番神海岸

    木質化した根茎
写真2012.7.2 番神海岸