イチヤクソウ
暮らしとの関わり
 石黒のブナ林の中を歩くと、必ずと言ってよいほどイチヤクソウに出会う。
 とくに晩秋から初冬、または早春の緑の少ない林床ではよく目につく。英名が「ウインター・グリーン」との事もうなづける。
 肉厚で白い葉脈の浮き出た葉と直立した花茎に白い花をつけた姿は貴重な園芸植物のようにも見える。
 たいていは1、2本で生えている。下写真のように十数本が一カ所に生えているのを見ることは石黒では少ない。種子の数は膨大なものであるが菌類と共生しないと栄養を吸収できない性質のためか群生している様を見たことはない。
 春に咲く花は白梅に似て上品である。ただし、花は下向きに咲くため地面に頬をつけるようにして覗き込むようにして見なければならない。
 種子を観察すると大変細かい(下写真)。小さな種子を拡大してみると両側に翼をもち長さは1ミリほど。全体の形はちょうどセロファン紙に包んだ飴玉のように見える。(右下図)
 先に記した通り、種子は発芽すると、根は菌糸の助けを借りて栄養を吸収し成長して緑色の茎を伸ばす。
 名前の由来は「一薬草」であろうが、薬効としては、WEB上で調べたところ、生の葉は切り傷や打撲、煎じ薬としては利尿剤、また中国では避妊薬として使われたという記述も見られる。

(写真2005.11.25下石黒 右上2005.7.20下石黒 右下2005.9.9下石黒)


         イチヤクソウの小群生

写真2005.11.26 下石黒


      花期-中央の花茎に鱗片葉が見られる
写真2013.6.30 下石黒

   子房の縦筋は花弁落下後〔左上〕には鮮明に確認できる
  写真2013.6.30 下石黒

      紫色を帯びる葉裏と花茎の稜角

写真2013.6.23 下石黒

               果期
写真2005.11.26 下石黒

            晩秋のイチヤクソウ
写真2010.11.30 下石黒

             細かな種子

写真2009.11.6 下石黒
             種子拡大写真

写真2009.11.6 下石黒 (拡大写真掲載2021.2.24) 


解 説
イチヤクソウ科
(現在はツツジ科に統合)
 北海道から九州の低山の林中に生える常緑多年草
 根元から長い柄のあるや肉厚の葉が数枚でる。葉の長さ3~6㎝、幅2~4㎝。表面は深緑色で裏面はしばしば葉柄とともに紫色を帯びる〔左下写真〕。縁にはごく浅い鋸歯が見られる。〔右下写真〕
 花期は6~7月。葉の間から15~25㎝の花茎を伸ばし上部に3~10個の白色の梅花に似た花をつける〔上写真〕。花には短い柄があり、下向きに開く〔左下写真〕。花茎に稜があり、ときには、1~2個の鱗片葉が見られる〔左下画像〕
 花弁は5個、ガクは深く5裂し、花の径は12~15㎜。雄しべは10個、雌しべは1個、花柱は湾曲する。〔右下画像〕子房は平らな円形で5本の縦溝があり1個の花柱をもつ。
 さく果は6~7㎜〔下写真〕
 イチヤクソウは野生地で菌類と共生して栄養分をとっているため栽培は難しいといわれる。
 名前の由来は全草が薬草になることによる。



     つぼみのころ

写真2013.6.23 下石黒

     開花のころ
  ブナの木の寄添うように
写真2013.6.30 下石黒


    10個の雄しべ

   花の様子 5個の花弁



写真2013.6.30 下石黒

     湾曲する花柱
写真2013.6.30 下石黒

   イチヤクソウの果実

写真2008.10.14 下石黒

  イチヤクソウの果実

写真2005.11.26 下石黒

       葉の表裏
写真2013.6.30 下石黒

     葉の縁の鋸歯
写真2009.11.6 下石黒

  種子拡大図(全長約1mm)

作図-編集会-2021.2.24