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暮らしとの関わり イは、石黒では「エグサ」と呼んだ。道端や田の畦など湿ったところに生える。道端のイは、大人が手で引き抜こうとしてもびくともしないほどの強靭な根を張っている。子どもには太刀打ちできる相手ではなかった。 田の畦草取りでは、この草は根元下の根を小鎌でえぐるようにして切り取った。 筆者が子どもの頃(1940代)の夏休みの仕事は畦草や畑の草取りであった。夏休みになると、昔の親は、「涼しいうちに勉強をしなさい」などとは言わなかったが「涼しいうちに仕事を」とやかましく言ったものだった。 先日(2010.6.25)上石黒川の上流で昨年放棄されたと想われる田にイが一面に進入している姿に出会った(下写真)。2年前には未だ耕作されていたものであろう。 百余年、何代にわたって耕やし続けられ整備されてきた田も原野に還るのは、驚くほど早い。 過疎が極限まで進み、高齢化も極まった石黒では至る所でこのような光景に出会う。 まさに、これは、現在、我が故郷のみならず、全国津々浦々で目にする憂うべき光景である。 写真上・右上2005.6.12大野 右下2005.7.3落合 全体の姿 写真2010.6.25上石黒 果実期 写真2010.7.28上石黒 茎の基部にある葉 写真2010.5.21上石黒 茎にある溝(たまたま明確な部分) 写真2010.5.21上石黒 さく果 写真2009.10.12下石黒 荒らし田に進入したイ 写真2010.6.25上石黒 |
解 説 イグサ科 日本全国各地の湿地、沼や池、水田の畔などに自生する多年草。 地下茎は横に這い、地上に細い円柱形の茎を密生して株をつくる。草丈30から50p。茎にははっきりしない溝が縦にある(左下写真)。 普通の形の葉はなく、茎の基部に赤褐色のうろこ状の葉がさやになってついている(左下写真)。 花期は6〜8月。茎の途中から穂が出ているように見えるが穂から上が葉(包葉)である(下写真)。 花は緑褐色で花被片6、雄しべ3、雌しべ1、柱頭3で円錐状に着ける(下写真)。 さく果は淡緑褐色の3稜がある倒卵形、鈍頭で長さ2〜3o(左下写真)。 場所によって異変が多い。 名前の由来は敷物に織ってその上に居るから「居→イ」という説もあるが不明。 また、昔、茎の髄を燭台の油にひたして灯りをともしたことから「トウシン」とも呼ばれる。 包葉 写真2010.6.25上石黒 花 写真2010.6.15落合 さく果と種子 写真2007.6.18落合 |