ウスバカゲロウ
暮らしとの関わり
 石黒ではウスバカゲロウの幼虫を「ハッコ」と呼んだ。茅葺き屋の縁の下や村の神社の縁の下によく巣が見られた。その他、山の杉の木の根元などにも見られた。
 梅雨の頃、雨の日の子どもたちの遊び場は神社であった。狭い社内では足りず縁の下も遊び場となった。
 縁の下では、アリジゴクの巣穴にアリなどの小さな昆虫を入れて、アリジゴクが獲物を捕らえて素早く土の中に引き込む様を見て楽しんだものだ。
 アリジゴクを巣からとりだして巣作りの様子を初めから観察したこともあった。頭の部分で土を放り投げるようにして巣を巧みに作った。(アリジゴクは取り出すと死んだふりをして動き出すまでしばらく待たなければならなかった。)動きはもっぱら後ずさりだけであったように記憶するが・・・・・。
 
 アリジゴクの観察が終わると、周りの乾いた土を集めて山にして真ん中に棒を立てて交替に棒を倒さないように周りの土を取り除く遊びをした。
 城山の方角でしきりにホトトギスの鳴き声がした。長雨に降りこめられた縁の下の乾いた土の香りとともに、今でも鮮やかに思い出す子どもの頃の暮らしのひとこまである。→子どもの暮らし
 ところで、この昆虫の成虫が薄暗い林の中をヒラヒラと飛ぶウスバカゲロウであることなど想像も出来ず、それを知ったのは大人になってからだった。

(写真上2005.7.28下石黒 右上下2005.9.10下石黒)


                アリジゴクの巣


          ウスバカゲロウの翅の様子

写真2005.7.28下石黒
解 説
ウスバカゲロウ科
 日本全土のどこにでも見られる。
 日本には17種の生息が記録されている。(世界には約1900種)なお17種のうち6種類のウスバカゲロウの幼虫が未だ確認されていないといわれている。 
 幼虫は巣の中で落ちてくる昆虫をとらえて体液のみを吸う。(体液のみすうためか幼虫には肛門はなく成虫になったときに一度に糞を放出するという。)
 また、獲物の確率は低く絶食に強く、4ヶ月水や餌なしに生きたという実験報告がある。
 成長したアリジゴクは砂の中に繭を作ってサナギとなり羽化すると土からはい出して成虫となる。
 成虫は6〜10月に現れ夜行性で薄暗い林の中などに見られる。
 成虫の体長は約30〜40o。前羽の長さは約35〜45o。4枚の羽は薄く透明で網の目のような脈がある。
 幼虫の寿命は2〜3年。成虫は2〜3週間。
 名前の由来はヒラヒラと飛翔するときの羽の様子陽炎に見立てたもの(左下写真)。



        成虫
写真2005.7.28下石黒

         死骸
写真2007.8.6下石黒