クビキリギス
暮らしとの関わり
 今朝(2021.2.26)のことだ。妻が「居間の入口の戸にツユムシがいる」と言う。「何を寝ぼけたことを!」と、思ったが行ってみると確かにそれらしい昆虫がいる。捕らえて仕事部屋のテーブルの上の一輪差しの花にとまらせるとじっとしている。一見、頭部はオンブバッタに似ているが腹から尾の方はツユムシのように見えた。だがすぐさま「いやいや、こいつはちがう」と思った。それは、他の仲間にはないバカでかい赤い歯を持っていたからだ。
 また、そもそも、成虫で越冬するチョウやガの存在は知っていたがキリギリスやバッタ類は聞いたことがない。
 やがて、陽が射込んで部屋の温度が上がってきたがほとんど動かずじっとしている。だが、撮影のカメラを接近させ過ぎ触覚に当たったらしく急に20㎝ほど離れたカーテンに跳び移った。どうやら冬眠から一時的に目覚めたらしい。元の位置に戻そうとカーテンから離そうと引っ張ったが必死にしがみついているらしく離れない。足が外れるのではと心配しながら漸く引き離し元の位置に戻すと前と同様にじっとしている。
 とにかく、名前を同定しなければと思い手元の「新潟県昆虫図鑑」を調べたがそれらしい昆虫の記載は見当たらない。WEB上での検索を試みたがこちらもキーワードが効果的でないせいか当たりがない。困り果てたところで市立博物館に指導を乞うことに気づき、早速昆虫担当の学芸員のKさんにメールで写真を送ったところ「クビキリギス」ではないかという指導を頂いた。WEB上で確認すると正にその通りであった。右欄の解説はWEB上のデータを参考にして記述したものである。
 本サイト「石黒の動植物」の「バッタ・キリギリス・コオロギ篇」は掲載数が少なく今後の課題と思っていたが、まさか、2月に自宅の家の中でクビキリギスとの出会いがあるとは夢にも思わなかった。これも残り少ない人生での因縁あってのかけがえのないめぐり合いである。この有難い出会いの相手には、孫が使い古した飼育箱でゆっくりと冬眠を続けてもらうことにした。
 4月には冬眠から覚めるであろうがメスであるので鳴くことはない。たとえオスで鳴いたとしても83才の私の耳にはクビキリギスの11kHzの高音の鳴き声は聞き取れないだろう。

 写真 2021.2.26 松美町


解 説
キリギリス科
 現在のところ国外での記録はなく日本特産種
 分布はかつては本州以西と言われていたが現在では全国。
 成虫で草木の根元や小屋などの建物の中で越冬する。羽化後の個体は、越冬前にかなりの距離を移動するという。
 体長57~65mm。体色は緑色型と褐色型、稀に赤色型が見られる。メスのほとんどは緑色型とのこと。
 出現期は3~5月に越冬個体、8月~11月は孵化個体。
 食性は雑食性で主にイネ科の植物と昆虫を餌としている。
 夜行性であるが日中に活動するものも見られるとのこと。メスには単為生殖の能力がありオスと交尾しなくても産卵することが出来るという。
 オスの鳴き声は「ジー・・・・・」と数分続くとても高い声で雑音に近い。
名前の由来は、噛みつくと引っ張っても離れず首が取れてしまうことから「首切りバッタ」という呼ばれたことによるといわれる。



花瓶の花にとまったクビキリギス

写真 2021.2.26 松美町