遠山の思い出 1 私たち夫婦が結婚したのは昭和25年でしたが、嫁ぎ先の田は遠山で苦労しましたがね。毎日、弁当持ちで野良仕事に出かけましたて。 行き道は上りでしたので1時間近くかかりました。 それでも、空身〔何も背負わないで〕行く事はなく、必ず堆肥などを背負って行ったものですて。また帰りは日が落ちてから帰り支度を始めて、連れあい〔主人〕が馬の草刈をするのを待って帰路につきました。妙高などの遠い山が夕日に映えるのがとてもきれいだった事を覚えています。でも途中でだんだん暗くなり、村道に出ると、もう真っ暗でした。 赤子は姑が子守をしてくれているので安心でしたが、途中で子どもの事を思うと乳が出るのでなるべく考えないことにしていました。 私の連れあいは仕事には厳しい人でしたが、根は優しい人でしたので、村道近くまで私を空身で歩かせ村道に入る頃に荷を分けてくれましたよ。 連れあいも7年前に亡くなり、私ももう81歳になりましたて。思い出すとホンに夢のようですて・・・・。 〔下石黒 大橋モトさんの話〕 →遠山の思い出 2 |