鎌砥石入れ  
 今日のような草刈機のない昔はが草刈りの唯一の道具であった。
 鎌は時々砥石で研がないと切れが悪くなる。そのため、写真のような手作りの縄袋に砥石を入れて腰に下げて作業をした。主に田の周りの草刈りで水は近くにあるので必要に応じて鎌研ぎが出来て便利であった。
 鎌研ぎは、柄を右足で踏んで刃を立て固定して左掌で刃裏から支えるようにしておいて研いだ。切れ具合は刃に爪をあてて動かし食い込み方で判断した。
 砥石の使い方が悪いと砥石の一部だけ凹むので砥石の全体を使うように留意して研いだ。水のないところでは唾をつけて研ぐこともあった。
 中学生の頃、父と田の畔薙ぎ(くろなぎ)の作業をするときに、静かな谷間に父が鎌を研ぐだけが妙にはっきりと聞こえたことを憶えている。