民具補説

        張り板と洗濯板

 私たちの子どもの頃(昭和のはじめ)は、正月にならなければ新しい反物で着物などつくってもらえませんでした。ふだんは古い着物を糸をとってほぐして洗濯桶の中で洗濯板を使って洗った布を使った仕立て直しの着物をきていました。
 仕立て直しは、まず、着物の縫い糸をほぐして、洗濯をして、それを張り板に米の粉を湯で薄くとかしてつくった糊で張り、さらに上からも刷毛で糊を薄く塗って外で乾かしました。
張り板と洗濯板

夕方になりますとどの板の布もぴったりと板に張り付き乾いているので布をはがすときにはパリパリと音がするのでした。はがしたものはまるで新しい反物のようでした。
 張り板の用材はキメが細かいホウノキが主に使われていました。張り板は裏と表が使われ1日に2回も張り替えをすることもありました。 子どもの頃に、昔話の舌切り雀もこの糊をなめたのではないかなぁと思ったものでした。
 洗濯板の溝はおよそ三角の山形に彫られていて円形一部のような曲線になっています。溝が直線状に掘ってあると石けんも両脇に流れ出てしまい洗い物にしみこみませんので曲線状にして石けん水が溜まるように工夫して作られたものと思います。

                     文・図 田辺雄司(石黒在住)