民具補説
              乾物入れ
 昭和の初め頃は(1920頃)乾物を入れる専門の缶などはなく、たいていの家では、
乾物入れに使った茶箱
ゼンマイやカンピョウを生紙(和紙)につつんで、カゴドオシなどに入れてデイ(客間)の天井に下げておきました。そして、料理に使うときには梯子をかけて必要な量だけ下ろして使ったものでした。
土用に乾物を天日に干す
 その後、トタン製の菓子缶や木製で内側に薄い亜鉛板が張られた茶箱が使われるようになりました。
 我が家では、隣村の茶屋にお茶を買いに行った祖父が「茶箱まで買ってきた」といって大きな箱を背負って帰ってきました。茶箱の中は湿気止めの薄い金属板が張ってあり蓋を開けるとシャラシャラと音がしたことを憶えています。

 祖父は、この箱を乾物入れて保存するために買ってきたのでした。
 それからは、ゼンマイやカンピョウの乾物はこの箱の中に入れてネズミにかじられないようにとデイ(客間)の隅に置いてありました。また、乾物は毎年、土用の天日にあてて虫がつかないように留意しました。
 その他、翌春に播くキュウリやナスの自分で採った種を新聞紙に包み、この箱の中に入れて置きました。
 昔からゼンマイやカンピョウは正月料理には欠かせないものであり、年の暮れになると箱の中からゼンマイやカンピョウを取り出して母や祖母が煮染めや昆布巻きを作ったことを懐かしく思い出します。


文・図 田辺雄司 (居谷在住)