石黒の方言

生 活 編  
2100
音 声
〔Narrator〕
大橋トシヲ
ことしゃ、ええのぐらの、ブナを切って ワッツェに しょて

今年は、家の裏の、ブナを切って薪にしようよ
そこのうちとは、ええもちなかま だんがなえ

(家持ち→分家)
お宅とは分家仲間だからね
きょんなは、シロエモを二百株もえうぇたえね 去年は、里芋を二百株も植えた
蔵のえうぇのブナの木に、ホヤが 付いてるなえ 土蔵ののブナの木に、宿り木が付いてるね
えぇ せつねぇ、オラ どうしょ

      
(ー切ない)
あら たいへん、私どうしよう
ええ(ええっこで、田植えを えちんち 手伝って もらわんねぇ ろかのう

(古語→結い)
 
ゆい(賃金なしで労働力を交換する)で、田植えを1日手伝ってもらえないでしょうか
ええかぁ(いいかぁ)、ようこと きかんとトッツァに しょうぶ してもらうぞ いいかね、言うことをきかないと父さんに折檻してもらうよ
あしたは、隣りに ええげえしに えぐがんだえね

明日は、隣の家に、結い返しに行くのですよ
ええそぅだ

     
 (話の相づち)
もっともだ
ええそだくれぇ

      
(話の相づち)
当然そうですよ
ええのぐらに、ミジナがえぇんだ(あんだ跡があるなえ
家の裏に、狢の歩いた跡があるね
きんなは、ええなしの稲刈りトウドに えって来たえね

 (古語→結い+返し)
昨日は、結い返しの稲刈りの手伝いに行ってきましたよ
ええ ほんだぁ(ほんなぁ)ここえあっとう おや ほんとだ、ここにあったよ
そこのオジサは、東京へ えがした てんが のう お宅のおじいさんは、東京へ行きなさったそうですね

オッカァ、えねそい すると、首ったまがえがっぽくて オラ えやだえね

      
(毬・いが+ぽい)
カアチャン、稲背負いすると、首がちくちくと痛くて ボク いやだよ
エエ、この子のエキアケが、えたげだなえ

あら、この子の雪焼けが、痛そうだ
えきおろしのかんなりだぞ、こらあ

本格的な降雪の前触れの雷だよ、これは
ことしゃ、はえ、13度、屋根のえきほりをしましたてぇ 今年は、もう、13回、屋根の雪下ろしをしましたよ
ねら、エキママを ほげづり落ちんなや 君たち、雪の崖を、滑る落ちるなよ
ばかに子どもがえきれるすけ、あしたは雨だかえ なえ

       
(古語→イキル)
ばかに子どもが調子に乗ってはしゃぐから明日は雨でしょうかね

おら、でっかく なったら東京へえぐ(いぐ)
ぼく、大きくなったら東京へ行く
おんに、えくせ
私に、よこせ
んなも、はやくえげぇそう 君も、早く行きなさいよ
口のあかんクリをえげぇてくれや

口の開かないクリをむき開いてくれよ
田ナゼのえごを、カンジョしておえてくれや 田の畔の4把ずつ交互に3束積みにした稲を、数えておいてくれよ
あしたは、峠の祭りだすけ、めんなで えごぅっそ 明日は、峠(地蔵峠)の祭だから、みんなで行きましょうよ
バア、カボチョを えぜてくれ〔くらさい〕 オバアチャン、カボチャをゆでて
えさまあ、どうしたがん

      
(えさー)
あらまあ、どうしたの
待ってれ、オレが、栗の木に上って、えさぶって 実を落としてくれるすけ

   (揺さぶる)
待ってなさい、私が、栗の木に上って、揺さぶって実を落としてあげるから
はだけの えしっころを へろってくれや 畑の石ころを拾ってくれよ

ゴンゴ徳利を、えすいで ホロに しまっておえてくれや 五合徳利を、ゆすいで戸棚にしまって置いて頂戴

えせぇもねぇことを、えうもんじゃねぇて

     
 (委細ー)

事情もよくわきまえないこと
を、言うものではないよ

取るに足らないつまらない物や事

みんじょぐちに、猫がえたき〔げーげ〕してたぞ

     
(古語→エタク)
台所に猫がへどしてたよ
なんだか きょは、えだっこくて仕事が はかどらんがね

      
(気怠い)
なんだか今日は、けだるくて仕事がはかどりませんよ
えたばつけは、たけぇだけに、エキが えっぺぇだのう
板畑(集落名)は、高い(標高)だけに、雪が多いですね
この子は、ほんに、えだれを垂らす子だのう
この子は、本当に、よだれを垂らす子だねぇ
えちがぶっつぁけた
(えちがぽーんとぶっつぁけた)
昔話の終わりに言う「これでおしまい」という意味の言葉
ンニャ えちげぇに、そうとも決めつけらんねぇぞ いや一概に、そうとも決めつけられないぞ
山羊を、山へ連れて えったら しっかりえつけておけや

     
 (結わえ+つける)
山羊を、山へ連れて行ったら しっかりつないでおきなさい
風邪が、えっこう なおらんで せつねぇや

      
(一向)
風邪が、いつまでもなおらないで切ないですよ
富山のクソリを飲んだでもえっこに効き目が ねぇようだて

      
(一向)
富山の薬を飲んだけど、少しも効き目がないようですよ
きんなは、えっせ(えっせげらな)なミヤゲを、くりゃって わりかったえね
昨日は、たくさんのおみやげをくださって恐縮でしたね
こんたびは、えっせきお世話になりました

      
(一式→すべて)
このたびは、何から何まで(いっさい)お世話様になりました
あこのトッツァ、えっせなことえって 子どもを えじめてとう
あそこの父さん、乱暴なことを言って子どもを叱っていたよ
センゼェのデェコも、えっせに でっかく なったなえ 前栽(庭先の畑)の大根も、だいぶ大きくなったね
おまえ、ちんせぇ頃はえっそ オラチに あすびに来て えた がんだがない
あんた、小さい頃は、いつも私の家に 遊びに来ていたのだよね
きょは、えっそけなキモンを着て来ましたて
今日は、一張羅の着物を着て来ましたよ
おら、こどしゃアツキはこれがえっそけなんそ 私の家では今年は小豆の収穫はこれきりなんですよ
えったんにさぶくなったのぅ 急に寒くなりましたね
あした、又あすびに えごや、えったんね

     
 (古語→タン)
明日、また遊びに行こうよ、きっとね(約束したね)

あれも、えったんぎのオツコだすけなぁ

     
 (一端+気)
あの人も、一徹な男だからなぁ
そんげぇに、えったんな事をしれば くたびれる こてや
         
     
 (一端)
そんなに、急激な事をすれば疲れますよ
おら、エマえっち欲しがんは 百連発のピストルだえや、

   (一に促音を入れて強調) 
ぼく、今一番欲しいのは、百連発のピストルだよ
えっちょめげなことをこえて 一人前な(生意気な)ことを言って
おら、えっちさきに診てもらったね 私は、一番先に診てもらいましたよ
あえらは、えつんかにけぇったえや あの人達は、ずっと前に帰ったよ
ええ、おまえたえつんこまにえね刈りゃったがん ええ、お宅さん何時の間に稲を刈られましたね
ええぇ、なしたえとしげな子だえない

     
古語→いとし+げ) 
まあ、なんとかわいい子だこと
江戸茶を、貰ったすけ飲んでえってくんなせぇ、ジサ

出稼ぎ先から買ってきた茶を貰ったから飲んで行ってください、おじいさん
えながんだども、オラ家にも あるえね

     
 (異な+物)
粗末な物ですが、私の家にもありますよ
おが、おめしをえなだくえぇや

 古語→エナダキ→頭のてっぺん
私が、神仏に供えた飯を有り難くいただき(食べる)ますよ
えっせなえなびかりだなえ すごい稲妻だねえ
あこのトッツァは、えにかすで人の家には へえりたがらねぇのだえね

あそこの父さんは、変わり者で人の家には入りたがらないのですよ
この子はえぬぐをキモンにつけて だえなしだえね
この子は、絵の具を着物につけて台無しですよ
えのごがさしたんだねえかえ リンパ腺がはれたのではないですか
オジや、おまえ えね投げしてくれや 次男よ、おまえ、稲投げ(ハサかけの投げ役)をしてくれよ
えびきりして約束したがんに、あのウソコキガ・・・

指切りして約束したのに、あのウソツキが・・・
エブはミヤマツよりすっけろかない。

      (古語・エビ→ブドウ)
エビズルはギヨウジャノミズより酸っぱいだろうかね

 植物・エビズル    植物・ギョウジャノミス
えつまでも、えぼつってえるなてぇ

   (威暴→いぼる)  

いつまでも、ふてくされているなよ
オツコんぜぇに、えびわなんかして えやなヤロだ 男のくせに、指輪なんかしていやな野郎だ
えまのき、千歯を使ってえるモンも えなかろうや
いまだに、千歯(脱穀の道具)を使っている者もいないでしょうよ

     
石黒の民具センバ
きょは、へんまっから えまるはらい(せぎはらい だえね

今日は、午後から用水路の掃除ですよ
えまんごろまで、どごで あすんで えたんだ 今頃まで、どこで遊んでいたのだ
えまんどこ、未だ しんぺぇは ねぇがん だでもね
今のところ、未だ心配はないのですでもね
ねら、山竹を切って来て、えみを作って飛ばそうや
君たち、ネマリダケを切って来て、を作って飛ばそうよ
よんべぇな、きびのわりぃえめみたえね

  (イメは夢の上代語)
夕べ、気味の悪いをみましたよ
えめし(ようはん)喰ってから、ヨゥもらえに えかして もらって いいだろうかね
  夕飯→ゆうめし→えめし

夕飯を食べてから、風呂もらいに行かせて頂いていいでしょうか
おらアニが戦死した時、えめじらせがあったえね

うちの長男が戦死した時、夢じらせがありましたよ
あした、えもえぜしてやるてぇ 明日、芋ゆでをしてやるよ
ここんしょ、えやったかえ(えらえたかえ) みなさん、ご在宅ですか

 ※訪問時の「ごめんください」 の挨拶語
こらぁ、オラチのえらずだがね

     
 (不要)
これは、うちの不要男ですよ

(次男は「もしかあに」三男以下はこのように呼ぶこともあった)
おら、えらんすけ、えっくらでも やるえね 僕は、要らないから、いくらでも差し上げますよ
ヌリを作ったがんだでも、ちっと えるかった えや〔なえ〕 糊を作ったのだけど、少しゆるかった
その木のネッコに、しっかりとえわえてくれや その木の根本にしっかりと縛って結わいて〕くれよ
田のえわぐろで、マグシを捕めたえね

   
(上畔)
田の上畔で、マムシを捕まえましたよ
岡野町へえって、座敷のえわしきを、買って来たえね

岡野町へ行って、座敷の上敷きを、買って来ましたよ
ブナ林の中の、えわっつらのベトを取って来て植木鉢に えれようて ブナ林の中の、上面の土を取って来て植木鉢に入れましょうよ
あのじさ、えわっぱりを わすえて えったえや〔えってなえ・えってがな〕 あのおじいさん、上っ張りを忘れて行ったよ
家の裏の田のえわままに、ゼンメェが えっぺぇ出てたえや

家の裏の田の上の傾斜地に、ゼンマイが沢山生えていたよ
じゃしきのえんえたを張りけぇてもらったえね 座敷の床板を張り替えて貰いましたよ
えんげ(ぎ)めてえると、吠え面かくぞ ねら、
      
     
 (いんげん・威厳・威言−
調子に乗っていい気になっていると、泣き面をかくぞ、お前達
あこのえん(えんが)は、なんくぁ だすけ気ょをつけろや あそこのは、どう猛だから注意しなさい
はえ、栗がえんで(よんできたなえ

      
(笑む)
もう、栗が熟してきたね
ねら、えんのくそがあるぞ、ふんずけんなや
君たち、犬の糞があるよ、踏むなよ
おらヤロ、どっかから えんのこへろって来て、飼うって じくねてえるがね
うちの子供、どこかから犬の仔を拾って来て飼うといって駄々をこねていますよ