海を渡ってきた親善使節の人形の思い出  


              下石黒 大橋富治


 私が、小学校4年生の夏の頃だと思う。アメリカからの親善使節の人形が送られてきた。全校生徒が運動場に整列させられ、校長先生が人形を持って壇上にあがられた。
 私は、何の人形だろうなあ、と思いながらも一面、緊張した気持ちで校長先生の話を聞いた。校長先生が、「この人形は、アメリカという遠い国から、はるばる海を渡って送られてきたのです。日本の小さな子ども達と仲良くしてほしいというので、こんな山の中の石黒の学校にも送られてきたのです」とおっしゃった。
 私は、校長先生の話を聞いて、子ども心にも「珍しい人形なんだなあ、アメリカとはどんな国なんだろう。調べてみたいないなあ」と感じた。
 当時、石黒の子ども達には、人形など持っている子はいなかったし、しかも、アメリカの人形とあって、みんなが珍しそうに見入ったものだ。目がぱっちりしており、頭の毛は、赤っぽく、石黒では見られないスカートを着ていた。
 校長先生の話が終わると、女の先生のオルガンの伴奏で「青い目の人形」の童謡を歌ったことを覚えている。
今でも、この童謡を口ずさむたびに当時をしのんでいる。


石黒校百年の歩み「昔を語る」より
写真 柏崎幼稚園旧所蔵人形 所蔵痴娯の家