恐れ乍ら書付を以て願上げ奉り候  田辺重順文書

 
  
   恐れ乍ら書付を以て願上げ奉り候
              刈羽郡
                石黒村
右村役人一同願いあげ奉り候私共村方の義兼ねて
御憐察在らされ候通り極く山中辺鄙の土地柄
田不足貧民多にて平年にても夫喰米引足り申さず
隣村より買入米致し漸々取続き罷り在り候處
去巳年の義は前代未聞の大凶作にて夫喰
米にはたと差支え拠無く去巳十一月中御米百五十俵
御拝借仰せつけられ度き段願いあげ奉り候處格別の
御慈悲を以て書面お取請けの上お聞き済みなし下し置かれ
有難く幸せに存じ居り候處当春に至り夫喰切迫
のため追々小前のもの神乞いなど□罷り出人少なからず
既に飢え死体ののもの有之実以て見るに忍ばず四月中
より時々御拝借御催促お願い申し上げ奉り候處遠からず
 
 


の内御下知仰せつけられ候段仰せ渡され有難く右の趣
小前一同へ申付け置き日々御沙汰相待ち居り候處今度
隣村末々組合村々へ御拝借米代金仰せられ
の趣下し請け奉り候何卒□□の御慈悲を以て隣村
組合同様に御下げ金仰せつけられ度願上げ奉り候左なく候
ては村方人□に相拘わり心配罷り在り候間恐れ乍ら早
速御拝借金仰せつけられ度願上げ奉り候
右願の通り御聞き済みなし下し置かれ候はば莫大の
御救いと重々有難く仕合せに存じ奉り候 以上
   明治三年
     丑六月
          右村  
            百姓代 助九郎
            組頭  宇左衛門
            庄屋  重五郎
 柏崎縣
   御役所 
 
                                             
                                                      読み下し文責 大橋寿一郎